著書『空気を読んではいけない』がベストセラーとなり、一躍脚光を浴びた総合格闘技世界チャンピオン、青木真也。2017年2月に電子書籍限定でリリースされた『人間白帯 青木真也が嫌われる理由』は、はあちゅう、イケダハヤト、ジェーン・スーとの対談から、本人の独白、さらに担当編集者による裏話まで、彼の魅力をさまざまな角度から掘り下げた作品となっています。「職業=自分」と語る、青木真也流の生き方を綴った本書の一部を、特別にご紹介します。
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空気を読まない、歩み寄らない……
スー 答えづらいかもしれないですけど、なんで一部の人にこんなに嫌われると思います?
青木 理解できないからでしょう。
スー どこが理解されないんだと思いますか? 理解できない人だからって、そんなにみんな嫌われないですよ。
青木 何なんだろうね。
スー 「青木氏はなぜ嫌われるのか会議」ですよ、これは。
青木 なんで嫌われるんだろうね。
スー 空気を読まないからっていうのはあると思うんですけど。
――言ってしまえばそうですね。
スー 言ってしまえばそうなんですけど、青木さんの何が嫌われてると思います? 「わー」って罵詈雑言が来るじゃないですか。ツイッターでも、いちいち相手にして、何やってんだと思いますけど。
青木 でもなんか「うるせえ、ばか!」みたいなとこなんで、あいつらは。
スー うん。でも、自分の何がいらいらさせるんだと思います? アンチを。
青木 「こいつ俺のこと嫌いだな」とか大体分かるんです。だったら、こういうことしたらもっといらいらするな。「ヒッヒッヒッ」ってからかったりするけどね。
スー よりいらいらさせる?
青木 させる。
スー なんか格闘技は、私が見てきた本当に短い期間で個人的に感じたことなんですけど、自分が果たせない男気とか夢を、ファンは選手に投影するじゃないですか。
青木 うん。
スー つまり自分だったらやらない損することや、怪我するかもしれない危険なことを「男気」でやり抜いてほしいって期待がどこかにあるのかなと。エンターテイメントとして。だから、青木さんが「俺は食えなくなってもUFCに挑戦する!」とか言ったほうが熱狂的なファンが付くんだと思うんですよ。
青木 うん。付きますね。
スー だけど、青木さん、それ全部かわすじゃないですか。
――桜庭さんがスターになったのは自分より身体が大きい選手に、ボコボコにされながらも立ち向かっていったみたいな部分を大きいですよね。
スー 無理めなことにも挑戦し、失敗しても立ち上がるみたいなことが熱を生むのかな。自分の代わりに頑張ってくれる人、自分の代わりにつらいところをやってくれて、しかも、つらいところをやった後につらいよって言わないでぐっと立ち上がってくれる。その時、ルサンチマンがカタルシスに変わるんだろうけど、青木さんはそれをやらないですよね。
青木 そりゃそうだよ。
――感情移入できないですよね、青木さん。そういう意味では。
青木 俺、つらいんだもん。俺が、つらいんだよ。
スー 青木さんは感情移入ができないっていうのはありますね、確かに。
青木 だって、俺がつらいんだよ。つらいのにつらくないなんて言えないでしょう。つらいんだから。
スー あと、分かってもらおうと歩み寄ることはしないのもありますね。
――あえての、あまのじゃくみたいな。
スー うん。分かってもらうための言葉じゃなくて、「バカは分かんなくていいや」みたいな言葉の使い方をするから……。
手のひらを返され続けてきた
青木 いや、やっぱね、あいつら裏切るから、平気で。
スー まあね、そうね。それはそうね。
青木 スーちゃんも多分、手のひら返されるよ。これから。
スー 分かりますよ。私、レコード会社で働いていたときにアーティストで見てきたから。
――青木さんは、もう何回も失望したんですよね。
青木 何回もね。あいつら離れたのにすぐ返ってきたみたいな。手のひら返しの連続だよね。
――それファンですか?
青木 関係者も含めて。でも、賢いやつは、手のひら返してきた連中をもう一回抱きしめるんだよね。でも俺は「もう来んな!」ってやるから。
スー でも関係者にも嫌われたら、青木さんがもし弱くなったとき、一斉にぼこぼこに言われますよ。
青木 それは、しょうがないじゃん。結局、格闘技は、「強い、弱い」「勝った、負けた」にしか価値はないので。
――その割り切り方がすごいですよね。
(2017年2月刊より抜粋)