西本願寺第25代門主・大谷光淳さんの新刊『令和版 仏の教え』は、仏教や浄土真宗にまつわる素朴な疑問に一問一答形式で答えた一冊。
「厄除けは必要ですか?」「キリスト教や神道についてどう思いますか?」「仏壇にお供えしたものは、いつ下げたらいいのですか?」「同じ仏教なのに、宗派が分かれているのはなぜですか?」など、誰もが一度は抱いたことのあるような疑問に、仏教の専門用語を使いすぎることなく、わかりやすく回答しています。
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七五三、お宮参り、初詣、成人式、結婚式などは、お寺でも行えますか?
年が改まると初詣の映像がニュースで流れます。多いところでは、30万人を超える人が参拝されるといいます。一般的に初詣は、お寺でも神社でもどちらに参ってもいいと理解されているようです。
このように日本人は、人生の節目においてさまざまな宗教と関わりを持っています。たとえば、初詣以外にも、七五三や成人式は神社で、結婚式は教会で、葬儀は仏式で、というケースも多いようです。
人生の節目ごとに、自分にはたらいている大きな力を改めて感じ、静かに手を合わせ、明日からの活力にする。そういうあり方も大切でしょう。
そうした中でお寺という場所は、亡くなった方を偲んだり、お葬式をしたりという悲しみのときだけに集うところだというのは大きな誤解です。葬儀や法要以外は神社に行くものだと思われている方も多いようですが、人の一生の喜ばしい儀礼の際にも、お寺に参拝いただくことがあまり知られていないのは残念なことです。
お寺の年始は「元旦会」にはじまり、多くの方が参拝されます。また毎年、西本願寺や築地本願寺での成人式には多くの新成人の方が参加されます。結婚式もお寺で行うことができます。また、お宮参りや七五三などに当たる子どもの参拝として、はじめてお寺にお参りする「初参式(しょさんしき)」があります。
当たり前のことですが、仏教徒はいつでも仏教を指針に生きています。そうでなくては、儀式は「そのときだけ」の「形だけのもの」になってしまうのではないでしょうか。
また、「日曜学校」や「子ども会」と呼ばれる子どもの集まりを設けている寺院もあり、お子さんたちは勉強や遊びをし、子ども向けのお経の本でお勤めをします。お寺としてボーイスカウトやガールスカウトの活動をしているところもありますので、参加してキャンプや野外活動、ボランティアなど、いろいろな体験をするのもよいでしょう。
私も若いころからスカウト活動の中でさまざまな経験を積みました。
子どものころからお寺に通う機会を持ち、仏教徒となる式を受けて法名(ほうみょう)をいただく。二十歳になればお寺での成人式に参加する……。そのように、人生がお寺とともに、仏教とともにあれば、身についた仏教が、必ずや人生のさまざまな問題解決のヒントを与えてくれるはずです。仏教とは、生きる力を与えてくれる教えです。