昨年、天満橋で開催した怪談会に来ていた書店員のUさんから聞いた話。
Uさんが幼稚園の年長になった頃に、弟が生まれて両親があまり構ってくれなくなった。
親を取られたような寂しさもあってか、それまでは聞き分けがよく、おとなしい性格だったUさんだが、急に泣いたり地団太を踏んで暴れたりするようになったらしい。
ある夜のこと、Uさんが目を覚ますと隣の布団で寝ていたお母さんがいなかった。多分弟におっぱいをあげに行ってしまったとUさんは思ったらしい。いつもならすぐ戻って来てくれるお母さんなのに、その夜は幾ら待っても来なかった。ただ部屋には時計がなく、あっても当時のUさんは時計が読めなかったので体感時間での話らしい。
気が遠くなるほど待って、Uさんが夜一人で寝るのは怖いなと思って泣いても誰も来てくれなかった。不安のあまり布団を被り泣き続け、最初は夜なので声を押し殺していたけれどやがて大きな声を出して泣いた、それでも誰も来てくれない。
寂しい、寂しいと大きな声で言いながら泣き、トイレに行くのも怖くおねしょもしてしまった。不安や辛さやいろんな気持ちが綯交ぜになり、Uさんは布団の中であらんかぎりの声で叫んだそうだ。
すると、ふすまが勢いよくバーンと開き何かが来た。
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