巷の「話し方」の本には一番大切なことが抜けている。それは、会話では「自分のこと」ではなく「相手のこと」を話すということ……。イメージコンサルタントの吉原珠央さんは、「自分の話をやめる」だけで、仕事も人間関係もみるみる好転すると断言。そう言い切れる根拠と、使えるノウハウを凝縮した一冊が、著書『自分のことは話すな』です。会話に苦手意識を持っている人なら必読の本書より、ぜひ試していただきたいポイントをいくつかご紹介します。
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もっとプライベートを質問しよう
仕事で何かを提案したいとき、あるいはプライベートで、より相手との距離を縮めたいと考えて会話をするときは、相手の思いを知ってからのほうが、断然うまくいくと誰もが想像できるでしょう。
しかしながら、「あまり立ち入ったことは聞くべきではない」といった、美徳なのか、勇気がないだけなのか、無関心なのかわかりませんが、私たちの中にはこうした考えが働くこともしばしばです。
私は、イメージコンサルティングでクライアントと話すときに、最初に相手の現状はもちろんのこと、目標年収や、理想とする社会的地位などを聞いておき、それ以降、それらの情報を念頭に置いてアドバイスをしています。
相手のニーズを常に頭に入れてアドバイスをすれば、「一般的には~」という尺度で、相手からは求められていない話をしてしまうことを回避できます。
「現状の小林さまへのベストな提案のため、最初に3つほど重要なことを伺ってもよろしいですか?」などと前置きし、姿勢を正してアイコンタクトを取り、丁寧さや謙虚さはキープしながら質問をしてみるのです。
あなたの質問の内容が、目の前の相手の利益に繋がる自信があれば、堂々とためらうことなく、プライベートなことなども遠慮なく聞いてみてください。
その際に、もしも「いきなりそんな質問は失礼だ」と相手にいわれたとすれば、原因は大きく3つのことが考えられます。
(1)質問の内容自体が適切ではない
(2)質問の意味と重要性が伝わっていない
(3)あなたの聞き方が失礼だった
つけ加えると、プライベートな質問をするときには、清潔感ある身だしなみと、相手への礼儀正しい接し方、そして丁寧な話し方といった最低限のマナーを守っていることが大前提です。
あなたが、相手からプライベートな情報を聞かせてもらうのに値する人物であることを、相手に確実に感じてもらう必要があることは、どうかお忘れなく。
「失礼」と思われないためには
まさか、こんな経験はないと思いますが、ガムをくちゃくちゃと嚙みながら「ご家族はいらっしゃるの?」と聞いたり、テーブルに肘をついてスマートフォンの画面を見ながら、「自宅はどこですか?」などと軽々しく聞くのは失礼であることは、誰でもおわかりでしょう。
私自身も過去に何度か、相手に対して警戒心が解けないうちに、「吉原さん、イメージコンサルタントって儲かるの?」と聞かれたことがありました。
そういうときは、お互いの立場にもよりますが、「細々とやっております」「毎日必死で、まだまだ勉強中です」などと答えながらも、やはり気分がよいとはいえません。
相手の聞き方によっては、全く印象が異なります。
例えば以前、「吉原さんのSNSを毎日楽しく拝見しています! 吉原さんはのびやかに育児をされているように見えて、タイムマネジメントもお上手なんだなと……」なんていう前置きをし、私の気分を上げてくれるライターさんがいらっしゃいました。
私は単純なので、そんなふうにいわれると嬉しくて、ありがたくて、つい気をよくして話をしてしまいます。
だからといって、私が特段、おだてに弱いわけではありません。
むしろ、「超」がつくほど現実的なタイプなので、相手のおだて方によっては、「この人には裏がある」と考えて冷静に距離を置くスイッチが入ってしまうこともあります。
先ほどのような場面では、ただ私から何かを聞き出したくて、最大限の気遣いと、予習してきてくれたであろう情報を使って、真面目に実直に接してくれる聞き手に対して、少しでも相手に満足してもらえる話をしようと思ったまでです。
相手に信用してもらうための工夫や努力を省いて、「あなたの仕事は儲かりますか?」のような失礼な質問をすることは論外です。
質問を受け止める側としても、「その質問に答えるほど、まだあなたと信頼関係を築けていませんので」といった、多少強気のシグナルを送ってもよいのではないでしょうか。
また、年齢を聞いておいて、リアクションに困って無言になったり、「あー」という一言しか出なかったりするようなら、まだまだ会話に対して準備不足だといえるでしょう。
自分のことは話すな
巷の「話し方」の本には一番大切なことが抜けている。それは、会話では「自分のこと」ではなく「相手のこと」を話すということ……。イメージコンサルタントの吉原珠央さんは、「自分の話をやめる」だけで、仕事も人間関係もみるみる好転すると断言。そう言い切れる根拠と、使えるノウハウを凝縮した一冊が、著書『自分のことは話すな』です。会話に苦手意識を持っている人なら必読の本書より、ぜひ試していただきたいポイントをいくつかご紹介します。