ある日、同期のキノッピが僕のデスクに現れた。
おそらく僕の部署の誰かに何かの用事があったのではないかと思う。
久しぶりに会った僕らは手短に、お互いの近況をキャッチアップし合った。
キノッピは数年後、定年より以前に会社を辞めようと思っている、と僕に話した。
ちょうどその頃、僕らバブル期大量入社の社員たちを対象とし、満50歳以上であることを必要条件とした早期退職制度の導入を人事が発表した。定年以前に早期退職を選べば、退職金が若干、割増しで支払われるというシステムだった。
僕はキノッピに訊いた。
会社を辞めて、どうやって暮らして行くの? 割増し退職金の金額はたかが知れているし、一生暮らして行くには不十分だと思うけど。
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美しい暮らし
日々を丁寧に慈しみながら暮らすこと。食事がおいしくいただけること、友人と楽しく語らうこと、その貴重さ、ありがたさを見つめ直すために。