口ベタだから、いつも相手に言い負かされてしまう……。ビジネスで、人間関係で、損ばかりしているとお悩みの方は少なくないでしょう。自分の思いをきちんと伝え、なおかつ相手を納得させるにはどうすればよいか? 「カリスマ塾長」として知られる伊藤真さんの『説得力ある伝え方』は、コミュニケーションで必須の「説得力」を養うことができる一冊。この中から、プレゼン、商談、デートなどで即戦力になるノウハウを、特別にお届けしましょう。
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時代が変われば「常識」も変わる
相手の考え方を受け入れることは、もちろん、説得の入り口にすぎません。
改憲派が「空間軸」を広げて説得するのに対して、私はそこで「時間軸」を広げます。現時点では「非常識」に見えるものでも、時代が変われば「常識」になることはあります。人間社会の常識は、絶対ではありません。
事実、かつての「非常識」がいまは「常識」になっているケースはいろいろあります。たとえば200年前、まだ南北戦争が始まる前のアメリカ南部で「奴隷制反対」を唱えたとしたら、おそらく「なんと非常識なことを言うのか」と呆れられたことでしょう。
「綿花プランテーションは奴隷制のおかげで成り立っている」「そもそも、紀元前から続いてきた奴隷制がなくなるわけがない」と罵倒や嘲笑を浴びたかもしれません。しかし、いまのアメリカで奴隷制の導入を主張したら、そちらのほうが「非常識」です。
日本でも、たとえば戦前と戦後では「常識/非常識」がいろいろと入れ替わりました。70年前に「女性も積極的に外で働くのが良い」と言えば、「何を非常識な。女は家にいて子どもを産み育てるのが当たり前だろう」と批判されたでしょう。いまやそんなことはわざわざ口にするまでもない常識となっています。
この論法があなたの武器になる
ならば、憲法九条もいずれは「世界の常識」になる可能性があります。
「奴隷制反対」も「女性の社会進出」も、当時は最先端の考え方だったからこそ、非常識と見なされました。憲法九条も同じです。100年後に振り返れば、いま「九条は非常識」と主張している人たちのほうが、非常識な存在になっているかもしれないのです。
これは、いわば「マイナスの非常識」を「プラスの非常識」にひっくり返すやり方です。最後は「いまは非常識に見えるからこそすばらしい」という結論に持っていくのです。
この論法で説得するときは、最初に「世界から見ると、本当に憲法九条は非常識きわまりないですよね」と、相手が抱いているマイナスのイメージをさらに膨らませておきます。
すると、最後にその価値をひっくり返したとき、相手が感じるプラスのイメージも大きくなります。いったんは憲法九条の「非常識さ」に同意して「そうだそうだ」と思った人は、それがマイナスからプラスに転じたときも、「そうだそうだ」と強く思えるようになるはずです。
説得力ある伝え方
口ベタだから、いつも相手に言い負かされてしまう……。ビジネスで、人間関係で、損ばかりしているとお悩みの方は少なくないでしょう。自分の思いをきちんと伝え、なおかつ相手を納得させるにはどうすればよいか? 「カリスマ塾長」として知られる伊藤真さんの『説得力ある伝え方』は、コミュニケーションで必須の「説得力」を養うことができる一冊。この中から、プレゼン、商談、デートなどで即戦力になるノウハウを、特別にお届けしましょう。