モノが売れない、といわれる時代。しかし、一流の営業マンは今このときも売りまくっている……。調達・購買業務コンサルタント、坂口孝則さんの『営業と詐欺のあいだ』は、彼らの「きわどいやり方」を赤裸々に明かした、一風変わったビジネス書。坂口さんによれば、「詐欺師と一流の営業マンは紙一重」だそう。手の内を知っておかないと、あなたもいつの間にか損をしているかも……? この試し読みで、ぜひテクニックの一端を知ってください。
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この「3つのステップ」を踏む
一流のセールスマンは必ず買い手のメリットをいやになるほど強調してくれます。商品のすごさを説明することすらほとんどありません。ここに絶望的な差があります。
もしお客のメリットが分からない場合はどうするかって?
簡単です。お客に訊くのです。
彼らは会話の端々にこう訊いてきます。
「さきほどこんなお話をなさいましたが、何かお困りのことがあるのですか?」。「他社のこういう製品をお使いだそうですが、何かお困りのことがあるのですか?」。あるいは「最近、何かお困りではないでしょうか?」。
この問いかけに応じて答えれば、「なるほど、それでしたら私どもの商品の××がお役に立てると思います」と返答されるでしょう。
彼らの手法は、お客に買わせるまでに次のようなステップを踏みます。
①メリットの提示:その商品が買い手をいかに輝かせてくれるかを伝える
②希少性の提示:目の前の商品数が残り少ないことを伝える
③機会損失の提示:買わなければ、むしろ損してしまうことを伝える
ここから住宅展示場に場面を移します。「こんな家で毎日暮らしていたら、家族は幸せになります」だとか「やっぱり家を持っているかいないかで、世間の信頼度は違いますよね」だとかのフレーズによって、お客はメリットがあることを十分に理解したとしましょう。
「今買わないとなくなります」
次は、お客に「希少性」を感じさせるときです。住宅展示場では、「結構みなさまに好評でしてね。もう分譲地は埋まりつつあります」とセールスマンは囁きます。
「限定100個」「先着30名」「今なら980円」というフレーズを見ない日はないでしょう。これは、お客にその商品の希少性・緊急性をアピールすることによって購買欲を圧倒的に高める古典的心理術なのです。
私も商談中に「購入については、検討してあとで返事します」と言ったところ、「今ちょうど1個だけ在庫がありまして、後日ではなくなっているかもしれません」と言われることがよくあります。
私は他企業のバイヤーの友人がたくさんいるので、一度その会社の違うセールスマンにその在庫を確認してもらったところ「たくさん在庫がありますのでご安心ください」と言われたそうです。人間不信に陥りますから、それ以降この種の言葉は規定演技としてとらえています。
では、この「希少性」はなぜ昔から繰り返し使われているのでしょうか。
それは、希少性によって買い手は「自分の自由が脅かされる」「選択肢が奪われる」と無意識に思ってしまうからです。
家なんてお金を払えばいつでも買えると思っています。それが買えない、と言われているわけです。
お金では買えないものがある。だけど、お金を払っても買えなくなるものがある。ならば、今のうちに手にしたい。そういう人間心理に希少性は刺さるのです。
「今買わないと損をします」
そして、最後のとどめとして「機会損失」を理解させます。
これをもっと分かりやすく言うと、「買うか買わないかを迷っている場合じゃない。買わないことが損失なんだ」と理解させることです。
優秀なセールスマンは、よくこう言います。「メリットはご理解いただけたでしょう。1万円でこの商品をお買い上げになれば、3万円の利益が見込めます。とすれば、買わないことは2万円の損失と一緒なのですよ」と。
人間はメリットを欲すると同時に、デメリットを被ることを非常に恐れる存在です。前記の例を考えてみれば、3万円の利益は可能性にすぎません。ただし、このセリフは「この商品を買わない自分はバカではないか」と思わせるに十分なものです。
住宅展示場でセールスマンは言います。「これを逃したら、なかなかこれ相当の物件を探すことはできませんよ。逃したら、ずっと後悔なさるでしょう」と。私は数千万円の買い物を即決する勇気など持ち合わせていませんが、かなりの数の人がその場で購入することを決めるそうです。
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営業と詐欺のあいだ
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