口ベタだから、いつも相手に言い負かされてしまう……。ビジネスで、人間関係で、損ばかりしているとお悩みの方は少なくないでしょう。自分の思いをきちんと伝え、なおかつ相手を納得させるにはどうすればよいか? 「カリスマ塾長」として知られる伊藤真さんの『説得力ある伝え方』は、コミュニケーションで必須の「説得力」を養うことができる一冊。この中から、プレゼン、商談、デートなどで即戦力になるノウハウを、特別にお届けしましょう。
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なぜあの人は説得力があるのか?
説得力の要素についてお話ししてきましたが、私は、もっと根っこの部分で説得力を支えるものがあるように思います。
たしかに「事実」と「論理」は重要ですが、それはディベートでも同じです。「説得」では、議論の勝ち負けだけを決めるディベートと違い、相手を心から納得させることが大事です。そのためには、理性に働きかけるだけでは十分ではありません。説得力を高めようと思ったら、相手の感情に働きかけることも求められます。
ここまで挙げてきた、権威、腕力、お金などの要素も、ある意味では相手の感情を動かすものと言えるでしょう。でも、それは誰もが持っているものではありません。むしろ、それを持っていない人のほうが多いから、説得するうえでの「武器」になる。したがって多くの人は、それに騙されないように気をつけることのほうが大事で、それを自分の説得に使うことはなかなかできません。
しかし、権威も腕力もお金も持たず、しかも口下手で物事を明快に説明するのが苦手でも、説得力のある人はいます。
たとえば、相手に何度も断られても、諦めずに粘り強く説得を続ける人。「弟子は取らない」と宣言している人のところに何度も通い詰めて、「わかったわかった。そこまで言うなら仕方ない」と根負けさせる話などをよく聞きます。
その説得力を支えているのは、言葉ではない。このとき相手の気持ちを動かしたのは、「熱意」や「情熱」、あるいは「誠意」といったものです。
誰でも本気になれば説得力が出る
では、その熱意や情熱はどうすれば出てくるのか。
これはもう、「本気になる」しかありません。たとえば自社製品を売り込むにしても、営業マン自身が本気で良い商品だと信じていなければ、セールストークにも説得力が出ないでしょう。内心で「どうせ三年で壊れるんだよな」と思いながら、「これは一生モノですから是非!」と勧めても、相手は熱意を感じません。こればかりは、テクニックでどうにかなる問題ではないのです。
だからといって、これは難しいことではありません。強い信念さえあれば、熱意は自然と伝わります。誰でも本気にさえなれば、説得力を持つことができる。口下手でしゃべるのが苦手でも、本気で「これがやりたい」「世の中をこう変えたい」「こうしたほうが絶対に相手のためになる」という思いがあれば、権威や腕力やお金のある人にも負けないような説得ができるはずです。
私自身も、説得のためにいろいろな工夫はしますが、その根底には「良い法律家を育てたい」とか「憲法の価値を伝えたい」という強い信念があります。本気だからこそ、その思いを多くの人に理解してもらい、行動を起こしてもらうための手段もいろいろと考える。
そもそも、自分が信じてもいないことを他人に信じさせるのは、説得ではなく「詐欺」です。その意味でも、「信念」こそが説得の本質なのです。
説得力ある伝え方
口ベタだから、いつも相手に言い負かされてしまう……。ビジネスで、人間関係で、損ばかりしているとお悩みの方は少なくないでしょう。自分の思いをきちんと伝え、なおかつ相手を納得させるにはどうすればよいか? 「カリスマ塾長」として知られる伊藤真さんの『説得力ある伝え方』は、コミュニケーションで必須の「説得力」を養うことができる一冊。この中から、プレゼン、商談、デートなどで即戦力になるノウハウを、特別にお届けしましょう。