モノが売れない、といわれる時代。しかし、一流の営業マンは今このときも売りまくっている……。調達・購買業務コンサルタント、坂口孝則さんの『営業と詐欺のあいだ』は、彼らの「きわどいやり方」を赤裸々に明かした、一風変わったビジネス書。坂口さんによれば、「詐欺師と一流の営業マンは紙一重」だそう。手の内を知っておかないと、あなたもいつの間にか損をしているかも……? この試し読みでぜひテクニックの一端を知ってください。
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優秀な営業マンは知っている
信頼を形成するために、セールスマンがお客について知るべきことは3つです。
①お客の属性:どんな組織に属する、どんな立場の人か
②お客のセンス:どんな能力・才能・趣味・タイプの人か
③お客の敵:どんな人間関係を持った人か
この3つを、自分は知っている、分かっている、と思わせればお客と信頼関係を形成することができます。「お客の属性」は当然として、「お客のセンス」と「お客の敵」については説明が必要でしょう。
「お客のセンス」
他人のセンスなどというものを、どうやって知るのか。私は、「この人は分かってくれているな」とお客に思い込ませればよい、と言いました。では、どうやって思い込ませるのか。
早い話が、その人を褒めるのです。
想像してみてください。あなたがどこかのブランド時計の新製品を腕につけていたとします。どちらのセールスマンに好印象を抱くでしょうか。
1人目「その時計のデザインはカッコいいですね」
2人目「その時計を選ぶなんてセンスいいですね」
間違いなく後者でしょう。
前者が対象物を褒めているのに対して、後者はその人自身を褒めているからです。その時計は良い、だけどもっと良いのは、それを選んだあなただ。そう後者は言っているからです。
誰も分かっていないかもしれないけれど、私はあなたのことを分かっていますよ。そういうメッセージを暗に示しているのです。
人間は自分の内なるセンスや才能が、世の中に正当に評価されていないという感覚を常に持っています。だから、それを評価してあげるのです。
私の知り合いのセールスマンは、商談のときに相手が机に置いたものを褒めることから始めるといいます。机にわざわざ置いたものは、その人が大切にしているということの表れなので、「これって新商品ですよね」とか「これって××というブランドのやつでしょう」とか言って「こだわる人はこういうのを選択なさるんですよね」と付け加えるのだとか。これだけでその後の会話がまったく違うのだそうです。
「お客の敵」
最後は、「お客の敵」について理解することでより信頼を強固なものとします。
英会話スクールで契約寸前にためらうお客が最後に言う言葉は「でもこんな大金……、一人では決められない」です。「旦那様と相談なさりたいわけですか?」「ええ。でも賛成してくれるかしら」と続きます。
この状況をセールスマンはどうやって打破するのでしょうか。
人は誰でも自分の社会的立場から逃れられません。私だって商談のとき、お断りするときには「ウチとしては……」「弊社としてはなかなか……」とか言います。あるいは人によっては、「社内会議を通せないだろうな……」とかね。
サラリーマンは誰しも、社内を自分の意思だけで動かすことはできません。それは社長も同じ。一個人としても、家族がいます。
そういうときに、一流のセールスマンは必ずこう訊いてきます。「○○さんご自身としてはどう思われますか?」。答えが「個人的には非常に魅力的なオファーだと思います」「私としてはなかなか良いと思います」というものだったら、お客の社会的立場と個人を分離させることに成功しています。
ならば次の質問はこうです。「何か社内でお困りのことがあるのですか?」とか「どなたか社内で反対なさる方がいらっしゃるのですか?」。この問いに対して「そうなんですよ……」とお客が愚痴を話し出したら、チャンスです。愚痴を聞くことは共同の敵を作り上げるのに、もってこいだからです。
営業と詐欺のあいだ
モノが売れない、といわれる時代。しかし、一流の営業マンは今このときも売りまくっている……。調達・購買業務コンサルタント、坂口孝則さんの『営業と詐欺のあいだ』は、彼らの「きわどいやり方」を赤裸々に明かした、一風変わったビジネス書。坂口さんによれば、「詐欺師と一流の営業マンは紙一重」だそう。手の内を知っておかないと、あなたもいつの間にか損をしているかも……? この「試し読み」で、ぜひテクニックの一端を知ってください。