インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?
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「折り紙付き」
この「折り紙」は、色紙で、鶴や兜を折る折り紙ではありません。ふたつに折った料紙のことで、公文書や目録などに使われていたといいます。のちに、書画や刀剣、器などの鑑定書に使われるようになりました。つまり、折り紙は、製作者や伝来、由来などを証明する鑑定書をさしているわけです。
鑑定書付きなら、信用できます。それほど確かだということですね。
もちろん、実際の鑑定書がなくても、「彼の腕は折り紙付きだ」という言い方は、よく耳にします。いいかげんなものですが、誰にも迷惑をかけず、みんなをいい気持ちにする鑑定書は、何枚発行してもいいのでしょう。
平たくいえば、定評がある、評判がいい。
古くは、音に聞こえたとか、名高い、誉れ高いなどの言葉もあります。
世間的なレベルでなくても、本人がいないところで、その人のほめ言葉を聞いたときは、伝えてあげたくなりますね。
直接ほめられるのも嬉しいものですが、間接的に聞く言葉は、かえって真実味を感じるものです。悪意のないほめ言葉なら、こういった伝え方もあるということを覚えておくのもいいのではないでしょうか。直接言うのが照れくさい言葉でも、人が言った言葉なら言えると思いませんか。
「圧巻」
昔の中国の官吏登用試験である「科挙」。その答案用紙を「巻」と呼んだそうです。
試験の結果、もっとも優れた「巻」は、すべての答案の一番上に置かれ、「諸巻を圧倒する」と表現したとか。そこから、「圧巻」という言葉が生まれました。
他を圧倒するほど、優れていることをいう場合もありますが、普通は、全体の中で最も素晴らしい部分や場面をさして圧巻といいますね。
作品などでは、全体を、漠然と「いいね」とほめられるより、印象に残った箇所を指摘される方が、より嬉しいもの。なんだか、丁寧に見てもらえたような気がするものです。
これは、作品に限らず、ほかのことにもいえるかもしれません。「声が綺麗だ」とか、「後片付けが上手だ」とか、ちょっとしたことで気がついたことを伝えてみてはいかがでしょうか。
人は、ひとつ自信を持つと、すべてのことに、自信を持って対処できるといいます。あなたの一言で、より輝くことができるようになるかもしれませんね。
ほめことば練習帳
インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?