インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?
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「素敵」
これは、江戸時代の流行語だとか。
「素晴らしい」の「す」に、「美的」「知的」のような「的」がついて、できたのだそうです。
「惚れる」の初めの一文字をとって、「ほの字」。「目見え」の「目」をとって、「御目文字」というのと、よく似ています。
もともと、ひらがなで書いていたのですが、次第に、「素的」や「素敵」などの字を当てるようになって、「素敵」に落ち着いたということです。「敵」には、釣り合うものという意味もあるので、こちらが採用されたのかもしれません。
ほかに、「出来過ぎ」を逆さ言葉にして「すぎでき」。それが変化したという説もあります。
どちらにしても、今なら、目くじらを立てる人がいそうですね。
でも、「快」の気持ちを伝える言葉なら、多くの人々の共感を呼んで、広まっていくこともあるのでしょう。
「可愛い」
もともとは、「顔映し」。これが、「かわはゆし」→「かわゆい」→「かわいい」と変化していったのだそうです。
「映し」は、まばゆくて、顔がほてったり、赤らんだりすること。ですから、「顔映し」も、「恥ずかしい」とか「きまりが悪い」という意味で使われていました。
「面映い」の「面」も顔のことなので、同じです。
まともに見ていられないということから、「不憫だ」、「気の毒だ」という意味も生まれました。こちらは、「かわいそう」という言葉として残っていますね。
やがて、憐れみから発した愛情を示すようになり、次第に愛情をあらわす言葉になっていったということです。
~下京や 紅屋が門を くぐりたる 男かはゆし 春の夜の月~(与謝野晶子『みだれ髪』)
この歌の「男かはゆし」は、大胆な表現として話題になったとか。当時、男性に「かはゆし(=かわいい)」というなんて、思いもよらなかったのでしょう。今では、「かわいい」を使う対象が、どんどん広がっていっているようです。
そういえば、漢字を当てると「可愛い」。「愛」を連想するところから、こう書くようになったといいます。とすると、「可愛い」を多用するようになったというのも、愛す可きものが増えた証なのかもしれません。
可愛いに限ったことではありませんが、愛情を感じれば、自然とほめたくなるものですね。
ほめことば練習帳
インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?