インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?
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「好き」
恋愛で一度は通る、告白の段階。思いを伝える言葉として、みなさんは、どんな言葉を選んだのでしょう。
もっとも一般的な言葉が「好き」という言葉ですね。
もちろん、恋愛に限らず、さまざまな場面で使われる言葉です。そして、「私は好きだ」というのも、充分、ほめ言葉になるのではないかと思います。
「好き」は、「好く」の連用形。語源説には、「進来」「進食」などがあります。たしかに、進んで接近したいという気持ちかもしれません。
それにしても、「進食」だとしたら、「好き」の基本も食べることになりますね。「食べちゃいたいほど、愛おしい」ということでしょうか。
対照的なのが、「恋」です。こちらは、離れているものを慕い、そばにいないことを嘆く感情だといいます。つまり、「来い」。こちらへ来てほしいという気持ちですね。「好き」よりも、受け身の気持ちです。その分、「恋しい」と言われると、「待っててくれるんだ」という気持ちになりますね。
「付き合ってほしい」「一緒にいたい」「そばにいてほしい」……。これらの相手に対する要求に比べて、自分の気持ちを伝えるのは、照れくさいもの。でも、素直な気持ちを言葉にする小さな勇気が、大きな絆を結ぶことにつながるのではないでしょうか。
「優しい」
理想の異性像に、「優しい人」と答える人は、多いようですね。
優しいは、「痩す」を形容詞化したものだという説が一般的になっています。
人目に対して、身も細る思いだ……これが原点だというのです。そこから、気を遣って控えめにふるまうことになりました。
ですが、次第に思いやりや、やわらかな態度をさすように変化していったということです。本当の優しさは、痩せるほど無理して尽くすのではなく、相手の気持ちを思いやることだと気づいたのかもしれません。
優男(やさお)、優女(やさめ)という言葉もあります。どちらも、優しくて、雅やかな人をさしたのですが、優女がいい意味しか使われないのに対して、優男は、なよなよとした男ということになり、印象が悪くなってしまいました。
それでも、優しさを大切に思う気持ちに変わりはありません。
特に、「優しいね」という言葉は、比較的、言いやすい言葉ではないでしょうか。相手のちょっとした心遣いに触れたとき……。「ありがとう」に添えて、伝えたい言葉です。
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ほめことば練習帳
インターネット上にあふれる悪口、けなし言葉。心ない言葉に傷つき、みずから命を絶つ人が現れるなど、社会問題にまで発展しています。今こそ「ほめ言葉」の価値を見直すべきではないでしょうか? 山下景子さんの『ほめことば練習帳』は、「面白い」「好き」といった身近なものから、「折り紙付き」「兜を脱ぐ」といったふだんあまり使わないものまで、語源をさかのぼって徹底解説。本書を参考に、今日から「ほめる習慣」を始めてみませんか?