生き方
読み終えたとき、本のなかに漂う静けさが、自分の中からも溢れ出てきて、どうしようもなく悲しくなった。読後すでに数ヶ月経っているのに、今もふとした瞬間にその時の感覚に引き戻されることがあるのはどうしてだろう。
北海道東部の架空の町、枝留を舞台に、添島家の一族三代と周りの人々が描かれる。助産婦の祖母と薄荷工場勤務の祖父。釣りと北海道犬を飼うことが趣味の父と、専業主婦の母。姉の歩と弟の始。そして隣の家に暮らす、いずれも独身の父の三姉妹。祖母の幼少期から、始が五十代になる現在まで、およそ百年間の出来事が、時空を行き来しつつ様々な目線で語られる。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
本の山
- バックナンバー
-
- 勝敗を超えたところに見るものは -『いま...
- 奇談好きなリーダーが導く新たな生きる活力...
- 辛い状況にあっても新しい道を切り拓く家 ...
- 「なぜ写真を撮るのか」をしっかり知るべき...
- 引退競走馬の未来に光が当たるということ ...
- シンプルな行為の中にも人それぞれの思いが...
- 当事者による文学が問う健常者の「無意識の...
- 事実を知ることは人の命を尊ぶこと -『黒...
- いちばんしたいこととはいちばん大切なもの...
- 知らない世界だからこそ自由に想像できる ...
- 守りきれたものは、いずれかたちを変えて自...
- サーカス - 誰しもが自分の居場所を見つ...
- 物語と料理が一体となって、読者の記憶に残...
- 北の大地を舞台にした熱気溢れる壮大なドラ...
- 「初心者目線」を保ち遭難者を発見する -...
- 「ものを書く」行為に突き動かされる理由ー...
- 大切なものを手放すことの難しさ -『よき...
- 各国の歴史的背景を学び、死刑の是非を自ら...
- 現実世界にも通じる奮闘を応援せずにいられ...
- 偽りの巡礼者 稀有な旅人の喜び -『天路...
- もっと見る