コロナの蔓延によって、病と死の不安に脅かされている昨今。そんな時代だからこそお薦めしたいのが、現役看護師にして僧侶でもある玉置妙憂さんの『すべてあなたが決めていい』です。医療と宗教、両方の立場から「生き方」と「逝き方」を説く著者は、「クローズアップ現代+」や「あさイチ」でも取り上げられ、反響を呼んでいます。今回は、人生の残り時間を豊かにするための考え方を説いた本作の一部を、ご紹介します。
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死に方は自由に選べない
「穏やかに死にたい」
「家族に看取られて幸せな死を迎えたい」
「ピンピンコロリで逝きたい」
人生の最期について、このような理想をお持ちの人は少なくありません。
この本を読んでくださっているあなたも、同じようなことを思い描いた経験はありませんか。
人は死に方を自由に選ぶことができません。
どんな人でも、突然死や不慮の事故に見舞われることもあれば、地震や災害の犠牲になる可能性もあります。新型コロナウイルスのようなやっかいなウイルスによってあっけなく命を奪われる人がいることも、すでによくおわかりだと思います。
30年間看護師として、10年間僧侶として、死にゆく方々のそばにいさせていただいている私に、「どうすれば幸せに逝けますか」「どうやったら後悔せずに死ねますか」としばしばご質問をいただくことがあります。
「生きている間に幸せだと思えなければ、幸せに死ぬことはできません」
「生きている間にやりたいことをやり尽くさなければ、何の後悔もなく死ぬことはできません」
などとお答えしておりますが、たとえ、不満が一切ない人生を送ってきた方であったとしても、「ああ面白い人生だった。もはや死ぬことに何の後悔もない」とはなかなかいかないようです。
人生の着地点が見えてくるとき、「こんなはずじゃなかった」「あのときこうしていればよかった」と後悔するのは、皆さん同じなのです。
幸せな死は、幸せな生がもたらす
そういうものだとわかっているからこそ、少しでも悔いを残さないためにできることはないかとお探しですよね。
では、一つお尋ねいたします。
皆さんは、今日、幸せだと思えることがありましたか?
「何もなかった」という人もいるかもしれませんね。
でも、日々の生活の中に幸せを感じられない人が、死ぬときだけ幸せということなんて、あるでしょうか。
私たちが死について考えることの意味は、ここにあります。
幸せに死にたいなら、幸せに生きること。
後悔なく死にたいなら、後悔なく生きること。
これを「わかる」ためなのです。
理想の死に方に思い悩むよりも、一日、一日の生き方に専念する。
それは、環境をまるごと変えたり、他人の力を借りたりしなければできないことでもないと思うのです。ご自分のものの見方や考え方を少し変えるだけで、そのへんにたくさん転がっている小さな幸せの灯りに気づくようになれるのですから。
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すべてあなたが決めていい
コロナの蔓延によって、病と死の不安に脅かされている昨今。それは気づかぬうちに、私たちのメンタルも蝕んでいます。そんな時代だからこそお薦めしたいのが、現役看護師にして僧侶でもある玉置妙憂さんの『すべてあなたが決めていい』です。医療と宗教、両方の立場から「生き方」と「逝き方」を説いた本書は、「朝日新聞」など各紙誌や、「クローズアップ現代+」「あさイチ」といった番組でも取り上げられ、反響を呼んでいます。今回は特別に、その内容を一部、ご紹介しましょう。