「温泉オタク会社員」こと永井千晴さん(@onsen_nagachi)の初めての本が発売になりました。その名も『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』! 訪れた温泉は約500湯。暇さえあればひとりで温泉を巡りまくっている永井さんによる温泉旅が100倍楽しくなる本書から、少しずつTIPSをご紹介していきます。
旅程を組むとき、「どこで日帰り入浴するか」を考えるのが好きです。せっかく温泉旅行に行くのに、泊まる旅館の温泉だけじゃあもったいない。「いい温泉」は旅館だけでなく、温泉地からほど遠い素朴な日帰り入浴施設にも注がれています。ついでにサクッと浸かるというより、もうひとつのメインなのです。
日帰り入浴の種類は、おおよそこんな感じ。
(1) 温泉街にある外湯、共同浴場
利用者は観光客が多く、きれいに手入れされていて、旅情ある施設も多くあります。旅館よりも新鮮な湯を引いている場合があり、まずは浸かってみるのがベター。「元湯」「総湯」「大湯」といった名前を掲げているところも。館内には歴史を物語る看板や写真が飾られていることもあり、古くから愛されているその尊さに思いを馳せます。
(2) 温泉地にある、無人の日帰り入浴施設
古い温泉地によくある、観光スポット的な湯船です。野天風呂のパターンと、事前に賽銭箱のような箱に小銭を入れて浸かる小屋パターンがあります。野天風呂パターンはほとんど混浴で、バスタオルOKは少なく、女性ひとり客のハードルがかなり高め。私はだいたい遠くから見つめて、「おじさんが入ってる……気持ちよさそうでいいな……」と羨むだけで終わります。小屋パターンもよくありますが、他にお客さんがいないと大変心許ないので、よっぽど浸かりたい温泉でなければパスします。温泉街に小屋パターンが点在していて、それらをめぐることを推奨している野沢温泉(長野)などは、新鮮な温泉体験なのでおすすめ。すばらしい湯が注がれています。
(3) 旅館がチェックアウトからチェックインの間に受け入れてくれる日帰り入浴
十~十五時などの時間帯で、日帰り入浴をさせてくれる宿があります。私はたいてい、「泊まるのはちょっと値段的にハードルが高い」「うわさの温泉、まずは泊まるよりも浸かってみたい」といった理由で、この日帰り入浴を選びます。千円前後で浸からせてくれるところが多く、泊まるとなると十倍近くかかるはずなので、温泉だけを楽しむならリーズナブル。宿によっては「昼食付き日帰り入浴プラン」のみを展開しているため、その場合は三千円ほど支払って優雅に二時間ほど滞在します。あこがれ宿の湯にお得に浸かるチャンスなので、旅行の午前中は忙しくなります。
(4) 住宅街や山間にポツンと建つ、日帰り入浴専門施設
地元客が多いため、生活感ある雰囲気を漂わせています。木桶ではなくプラスチックの洗面器が備えられ、常連客のシャンプーセットが置いてあることも。しかし侮あなどることなかれ。いい温泉が湧いているところも多く、事前の情報収集なしにはたどり着けない穴場がたくさんあります。大体、一見の客が訪れると、常連さんが「私は毎週通っていて、膝が軽くなった」「この湯は本当に、どの温泉よりもすばらしい」と愛を語ってくれます。
このうち、私がもっとも楽しみに訪れるのは(4)。おそろしいほどの個性を持ち、「なんでこんなところにこんな湯が」と驚きがあるのは断然(4)です。(4)に出会うためには、前述の通り、事前にどこにあるのかを調べておく必要があります。道すがら、たまたま名湯に出会えることはありません。わざわざ遠回りしたり、足を伸ばしたりして出会えるような場所ばかりなのです。また(3)も、事前に調べておきたいところ。チェックアウトからチェックインまでのわずかな時間帯に日帰り入浴したいがために、わざわざ朝早く出発して車を走らせる旅程を何度も組んできました。温泉オタクの温泉旅行は、十五時までが勝負なんです。
女ひとり温泉をサイコーにする53の方法
「温泉オタク」会社員による温泉偏愛エッセイ
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