乃木坂46イチの才女、山崎怜奈さんのはじめての本『歴史のじかん』。
専門家の先生方と山崎さんの座談形式で、全14個の歴史テーマを語り尽くした書籍です。
歴史が好きな方も苦手な方も楽しめるこちらの一冊、試し読みをお届けいたします。第3回は千利休について取り上げました! 実は政治にもかなり深く関わっていた⁉ という利休のこと、一緒に学んでいきましょう。
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ただのおじいちゃんじゃなかった 茶人・千利休
千利休は、戦国時代から安土桃山時代に活躍した茶人(一五二二~一五九一年)で、織田信長や豊臣秀吉にも仕えたと言われている人物。茶道の場だけでなく、空間の造り方や、お花などいろいろなことに長けていたという印象が、非常に強いです。名前を知っている人は多いと思いますが、今回は千利休にまつわるミステリアスなお話をいろいろ伺いたいと思います。
今回の先生
伊東潤さん(作家・小説家)
ビジネスマンを経て小説家に転身。吉川英治文学新人賞や山田風太郎賞など文学賞を多数受賞。『天下人の茶』『茶聖』などの自身の著書には、戦国時代の陰の立役者、フィクサー、またはプロデューサー的な立場として描かれた千利休が登場する。
宮下玄覇さん(宮帯出版社代表取締役・古田織部美術館館長)
古美術を通した歴史研究のほか、茶道具に関する著書も多数。織部流茶人。宮帯出版社からは「茶人叢書」シリーズなどを刊行。京都の北山の古田織部美術館では、織部関係の美術品・歴史資料を展示。(織部は、武将茶人。千利休の高弟で、利休の死後茶の湯の後継者となった人物)
第一章 日本初のバブルを起こした男!?
商家の生まれの、「商人茶人」
山崎 ▼ ドラマなどで出てくる千利休といえば、「落ち着いた、お茶を嗜たしなんでいるおじいちゃん」みたいな印象が強いですが、ここまで世間一般に広く知られるようになったのは、なぜですか?
伊東 ▼ 利休は、大阪の南にある堺という町の出身です。「魚とと屋や」という商号の商人の家に生まれ、「納屋業」と呼ばれる貸し倉庫業を営み、魚や干物なども扱っていました。
山崎 ▼ もともと商人の生まれだったんですね。
伊東 ▼ そうなんです。室町時代までは、茶の湯といえば「茶坊主」と呼ばれるお坊さんが淹れるものでしたが、信長以降は一変し、商人が中心になって茶の湯が流行ったんです。この「商人茶人」の典型が利休です。利休は七歳のときにお茶の道に入ったと言われています。少年時代、当時の第一人者と呼ばれていた武野紹鴎に弟子入りして、そこで茶の湯の修業を積み、堺を代表する茶人の一人になっていくわけです。
山崎 ▼ 武野紹鴎は、戦国時代の堺の豪商茶人で、茶の湯の第一人者ですね。千利休は十八歳のときに弟子入りしたそうですが。
伊東 ▼ その頃のエピソードとして有名なものがあります。師匠の武野紹鴎から客が来るので庭を掃除しておくようにと言われた利休は、いったん庭をきれいに掃きます。ところが、全く風情がないことに気付き、木に登って葉を落としたのです。つまり自らの作意によって自然を表現したのです。それを見た武野紹鴎は、利休が「侘数寄」を理解し、その才能が並々ならぬものであると見抜いたと言われています。
山崎 ▼ 利休には若くして美的センスが備わっていたのですね。
信長や秀吉が茶の湯に目をつけた理由
山崎 ▼ その当時の茶人の地位や世間的な役割は、どのようなものだったのですか?
宮下 ▼ 信長は入京後、堺商人の財力に目をつけ軍資金目当てに干渉し始めます。その堺の豪商茶人の津田宗及や利休との繋がりで、茶の湯に目をつけた。
山崎 ▼ そこから織田信長の茶頭として仕えることになったんですね。
伊東 ▼ 信長は、戦国時代に茶の湯の有用性を理解した最初の人ですが、重要なのは「何のために茶の湯に目をつけたのか」です。天下平定戦をこれから行おうとしている信長にとって、頭が痛いのは功を挙げた家臣に分け与える土地が足りなくなることです。つまり土地の代替になるものを探しました。そこで見つけたのが「東山御物」などの名物です。室町時代に大陸から渡ってきた「唐から渡わたり」と言われる名物茶道具を、功臣に分け与えることで、それをステータスにし、土地の不足を補おうとしたのです。
山崎 ▼ 信長は、限りある領土ではなく、茶器を褒美にして補いたかったと。ちなみに、「東山御物」というのは、足利将軍家が代々収集してきた唐から物もので、絵画・墨跡・茶道具などがあるみたいですね。
伊東 ▼ はい。しかし問題は、名物にも限りがあることです。それで信長が次の一手を考えようとしていたところで本能寺の変が起こり、最上級の品々が焼けてしまいました。
山崎 ▼ そっか! 災難ですね……。
伊東 ▼ 次の天下人になった秀吉も、信長と同じ土地不足に直面するわけです。信長から受け継いだ名物にも限りがある。そこで権威者を創り出し、「今いま焼やき」と呼ばれる新しく焼いたお茶碗を「これにはたいへんな価値があります」とその権威者に評価させ、それらを土地の代わりに配ろうと思い付いたのです。それにより上は天皇から下は民まで、茶の湯の一大ブームを起こそうとしました。その権威者兼プロデューサー的な役割を担わされたのが、利休だったのではないかと、私は考えています。
山崎 ▼「利休ブランドの茶器」を領地の代わりに褒賞としたというわけですね。
伊東 ▼ 利休自身、堺の商人ですから、自分が「これはすごいものだ」と言うだけで、その茶碗に何百万何千万円という値打ちがつくのは、商売としてもおいしいわけです。それで、うまく二人の利害が一致し、現世と精神世界の天下を分け合おうとなったのです。
山崎 ▼ 武将の思惑と商人の利益が一致して、新たなビジネスが生まれたんですね。
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茶道と政治が深く結びついてた時代、一大プロデューサーとして生きた千利休の生き様、気になるところです。
続きはぜひ、書籍でお楽しみください!
★山崎怜奈さんの解説動画、Twitterにて投稿しています★
山崎さんによる内容紹介動画、第三章です?
— 【公式】乃木坂46山崎怜奈はじめての書籍『歴史のじかん』 (@rena_history) February 7, 2021
千利休、ただのお茶好きのおじいちゃんではなく、政治にも深くかかわっていたようです?歴史の見渡し方も教えてくれる回だと思います?#歴史のじかん#山崎怜奈#乃木坂46 pic.twitter.com/dTMHGOlfjO
歴史のじかん
2021年2月10日発売、乃木坂46山崎怜奈さんの初めての書籍『歴史のじかん』に関する情報をご紹介します。
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