ネット上にあふれる、さまざまな医療情報。ついググってしまいがちですが、その中身は玉石混淆なのが実情です。そこでオススメしたいのが、現役医師の「けいゆう先生」こと、山本健人さんが上梓した『医者が教える正しい病院のかかり方』。ちょっとした風邪から、がん、薬の飲み方まで、お医者さんに聞きたくても聞けなかった情報が詰まっています。中身を一部、抜粋してご紹介しましょう。
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初診ならクリニックへ
クリニック(診療所・医院)とは、入院できない、あるいは、できてもベッド数が19床以下、という小規模の医療機関を指します。一方、病院とは、入院患者のためのベッド数が20床以上の、規模の大きな医療機関を指します。
では、クリニックと病院をどのように使い分ければいいのでしょうか。この質問の答えは、状況によって変わります。
まず、初診時(初めて受診するとき)は、病院よりクリニックの方がよいでしょう。
初診時に病院に行ってしまうと、患者さんにとって、
・待ち時間が非常に長くなる
・初診料が高くつく
・複数の科をハシゴして受診しなくてはならなくなることがある
などのデメリットがあります。
病院の外来は、たいてい予約患者さんで診察枠が一杯です。そして、原則的には、初診の患者さんより予約患者さんの診察が優先されます。
初診の方が来ると、まず看護師などの医療スタッフが問診をし、緊急性があるかないかを判断します。「予約の方を押しのけてでも早く診なくてはならない」と判断される場合を除いては、予約患者さんの診察の合間にたまたまできた空き時間に診るか、最後に診させていただくか、というパターンになります。
その結果、初診の患者さんに対しては大変申し訳ないのですが、合計2、3時間以上お待たせするのも珍しくはありません。初診の場合、そもそも最初の受付の時点で様々な手続きに時間がかかりますし、そこに数時間の待ち時間が加わると、まさに「一日仕事」になってしまいます。
また、初診で大きな病院(主に200床以上)に行くと、「選定療養費」という追加料金を支払う必要があります。病院によっては、8000円~1万円と、かなり高い選定療養費が設定されているところもあります。選定療養費は、患者さんに、できるだけ近所のかかりつけ医を受診してもらうことを促すために設けられています。その点でも、最初にクリニックを受診する方がメリットは大きいのです。
初診でクリニックに行き、「クリニックではできない精密検査が必要」「入院が必要かもしれない」などと判断されると、大きな病院への紹介状を書いてもらえます。紹介状を持参して受診すれば、選定療養費を支払う必要はありません。
予想外に時間がかかることも
初診でクリニックに行った方がいい理由はまだあります。
病院では、診療科ごとに外来受付が分かれています。初診で病院に行くと、自分が何科を受診すればいいのか、患者さん本人には分からないことがよくあります。その場合は、初診受付で問診票を書いてもらい、医療事務員などが、該当すると思われる科にひとまず割り振るのが一般的です。
ところが、医療事務員は、患者さんを診察したうえで判断するわけではないので、科の選択が適切かどうかは、実際に医師が診察するまで分かりません。
たとえば、「胸が痛い」と言ってやってきた患者さんが、心臓を専門に診る循環器内科の受診を指示されたとします。診察の結果、痛みの原因は気胸(肺に小さな穴があく呼吸器の病気)だと分かりました。するとどうなるでしょう?
患者さんは今度は、呼吸器内科の受診を指示され、別の場所に移動することになります。循環器内科医に診てもらうまで、長い待ち時間に耐えたのに、今度は呼吸器内科の待合室でさらに待たなくてはなりません。患者さんから医師への症状の説明なども二度手間になります。
もし初診でクリニックに行っていればどうでしょうか?
クリニックの医師なら、痛みの起こり方や種類について患者さんから情報を引き出し、聴診器を胸に当て、「気胸の疑い」として、病院の呼吸器内科にストレートに紹介状を書いてくれるでしょう。本来受診する必要のなかった科を経由する手間がなくなりますし、経過や病状を紹介状に詳しく書いてくれますので、病院の医師も患者さんに会った瞬間からスムーズに診療を始めることができます。
さらに、当座の痛みを抑えてくれたり、病院を受診するまでにしておくことや、今後の治療の見通しについて説明してくれたりすることもあるでしょう。
この点でも、初診時はクリニックの方が患者さんにとって有利だと言えます。
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