猫好きのみなさまお待ちかね! 石黒由紀子さんの『猫は、うれしかったことしか覚えていない』と、山田かおりさんの『猫には嫌なところがまったくない』が、文庫になりました!(やったー! にゃーにゃー!)発売を記念して、勝手に「幻冬舎ねこ文庫」特集をお送りしています。今回は『猫は、うれしかったことしか覚えていない』の試し読みをお届けします。
猫は、命いっぱい生きている
猫にも人にも、クセというか、無意識にしてしまう行動の中に、自分の経験が刻ま れていることがあるものです。野良猫として暮らしていた猫が、保護されて家猫とな ったとき、野良猫時代の生活がしのばれる行動をとることがあります。
外から聞こえる男の人の声に、「はっ!」として耳を傾ける猫は「どこかの男の人 に、親切にしてもらったことがある」のかもしれないし、バイクの音を怖がる猫は「バイクで何か危ない経験をした」のかもしれません。 知り合いの家の元野良猫・茶トラのチャイは、8歳になるオス。ふだんから匍匐前進のような、少し特徴のある歩き方をします。その姿は愛嬌があって、つい笑ってし まうのですが、路上で暮らしていたときに、狭くて低い側溝などをよく歩いていたの かもしれません。
その想像が当たっているのか違っているのか、本当のところはわかりませんが、私 たちはついいろいろな想像をし、勝手に不憫に思ったりしてしまうものです。
最近、近所で見かける猫がいます。小柄な三毛猫なのできっとメスで、そう若くもない? とはいえ4年という野良猫の平均寿命から考えると、まだ2歳か3歳くらいなのかもしれません。駐車場によくいるので、チュウ子と呼んでいます。
ときには凶悪そうな目で凄んでくることもあるし、またあるときには、駐車しているクルマの陰でのんびり涼んでいたり。風雨を凌ぐだけでも大変でしょうが、チュウ 子を見るかぎり、案外満足そうです。
産んでくれた母猫はいたわけだし、兄弟もいたことでしょう。でも、どんな理由な のか、いつからか、ひとり(1匹)で暮らすことになったチュウ子。それからはまさ に、「雨の日には雨の中を、風の日には風の中を」。
自分の直感を信じ、何事にも執着しない。自分ができることをやりきっているとい う確信があるのでしょう。チュウ子には「とにかく生きる」という意欲がみなぎって います。というか、「明日どうしよう」なんて考えたこともないみたい。
今を、命いっぱい生きている猫は、凜々しくて美しいです。
幻冬舎ねこ文庫?発売記念特集
猫と暮らせば毎日がちょっと幸せになる。
猫と生きれば人生がとっても楽しくなる。
猫すきさんも、そうでない人も。
読んだら心がふわふわ柔らかくなる、幻冬舎ねこ文庫の特集です。