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歴史のじかん

2021.03.01 公開 ポスト

試し読み#9

山崎怜奈が「安政の大獄」の本当のところを母利美和さん、一坂太郎さんから学ぶ山崎怜奈

乃木坂46イチの才女、山崎怜奈さんのはじめての本『歴史のじかん』。

専門家の先生方と山崎さんの座談形式で、全14個の歴史テーマを語り尽くした書籍です。

歴史が好きな方も苦手な方も楽しめるこちらの一冊、試し読みをお届けいたします。第9回は安政の大獄がテーマ。悪政と名高い安政の大獄ですが、本当にそうだったのでしょうか。山崎さんと一緒に学んでいきましょう。

*   *   *

 

安政の大獄 井伊直弼って良い人? 悪い人?

今回のテーマは、安政の大獄です。一八五八~一八五九年、江戸幕府の大老、井伊直弼(一八一五~一八六〇年)が中心となって、開国に反対するものたちを弾圧した事件です。直弼は自分の思い通りの政治を実行するために、罪のない人々までも捕らえて、死罪を含む厳しい処罰を与えました。安政の大獄さえなければ、もしかしたら吉田松陰も生きながらえて、明治維新の主役となったかもしれません。しかし、最近の研究では、これまでの通説は違うかもしれないという考えも出てきているんだとか……。新説も含めて、掘り下げていきましょう。

今回の先生

母利美和さん(京都女子大学文学部史学科教授)

井伊直弼をはじめとする彦根藩研究の第一人者。著書に『井伊直弼』(吉川弘文館)など。

一坂太郎さん(萩博物館特別学芸員)

幕末維新史研究家。山口県にて研究を行っている。『吉田松陰とその家族』『吉田松陰190歳』『坂本龍馬と高杉晋作』など著書多数。

第一章 ホントに「安政の大獄」は悪政なの?

安政の大獄=井伊直弼の弾圧、ではない!?

山崎 ▼ 安政の大獄は、井伊直弼が自分の政策に反対する勢力を弾圧するための取り組みだったんですか?

母利 ▼ 政策に反対するものを弾圧したわけではありません。では、なぜ起こったと思いますか?

山崎 ▼ よく言われているきっかけは、一八五八年に江戸幕府と米国との間で結ばれた日米修好通商条約ですよね。自由貿易、各地の開港、外国人居留地の設置などを制定するこの条約を、井伊直弼が率先して結ぼうとしたことに対して、朝廷が反発したことがきっかけ……と、教科書では読みました。

母利 ▼ そうです。外国人が居留地を設けて交易を行うと、日本人と接触する機会が多くなりますよね。これについて、朝廷側から大きな反対意見がありました。

山崎 ▼ なるほど……。

母利 ▼ しかし江戸幕府は、国際情勢から考えて、条約調印はやむを得ないと考えていました。ところが、大名の中には反対しているものもいる。つまり朝廷側の大名です。そこで、天皇の許可——つまり「勅許」をもらっておいたほうがいいと思ったわけです。

山崎 ▼ 体裁として、そのほうが示しがつくということですね。

母利 ▼ はい。反対している大名も、朝廷がOKを出せば仕方ないと理解するだろうと。特に「尊皇(=天皇を尊ぶ考え方)」と、「攘夷(=外国を追い払おうという思想)」が結びついた「尊王攘夷論」が広がっていましたから。それで、当時、幕閣(老中)のトップであった堀田正睦は京都に勅許をもらいに行きました。でも、勅許をもらえなかったんです。

山崎 ▼ その時代の天皇が、外国人嫌いの孝明天皇(在位一八四六~一八六七年)だったからですか?

母利 ▼ はい。ただ、当時は、アヘン戦争で勝利したイギリスやフランスが、いつ日本に攻めてくるか分からないという状況でした。このままでは日本が危ういので、堀田の勅許失敗のあと大老に就任した井伊直弼が「勅許なしでも調印せざるを得ない」と、幕府の総意で調印してしまうのです。そういう流れなので、井伊直弼が独断でやったわけではありません

山崎 ▼ アヘン戦争は一八四〇~一八四二年、アヘン密貿易をめぐって行われたイギリスの中国に対する侵略戦争ですよね。たしかにその状況だと、調印せざるを得ないかも……。

一坂 ▼ 井伊直弼に天皇に逆らう意思があったかというと、実はそうではなく、非常に皇室を大事にしていた大名なんです。例えば御所が火事になって、孝明天皇の持っていた本が焼けてしまったと聞きつけたときには、その本を探してプレゼントしたんですよ。

山崎 ▼ 熱心ですね。

一坂 ▼ 井伊が大老になったとき、孝明天皇は喜んだんです。でも、その井伊が結果的には孝明天皇の意思に逆らうことをやってしまう。でも井伊は、勅許はもういらないというムードの幕府の中で、調印には勅許が必要だと最後まで主張していたんです。

 

幕府を通り越して水戸藩に下りた密勅

母利 ▼「条約調印を撤回しろ」というような「密勅(=天皇から幕府への秘密の命令)」が、朝廷側から幕府に出されました。そのとき、幕府だけではなくて、水戸藩にも出ています。しかも、先に出たのは水戸藩のほうなんです。

山崎 ▼ 幕府にしか下りないはずの「密勅」が、水戸藩にも下りていたと。

母利 ▼ これがものすごく大きな問題でした。本来、幕府だけに密勅が出ていれば問題なかったんです。

山崎 ▼ その行き違いがあったからこそ、トラブルが生まれたんですね。なぜ水戸藩に伝わったんですか?

母利 ▼ 水戸藩には幕府の対外政策に反抗する尊王攘夷の動きがあり、裏工作をしようとしていました。だから、水戸はもしかしたら朝廷側に協力してくれるかもしれない、という期待で、水戸にも密勅が出ました。でも、水戸家は将軍の臣下です。一応親戚筋とはいえ、家来です。

山崎 ▼ それを乗り越えるのは、裏切り行為になりますよね。

一坂 ▼ はい。幕府としては、自分たちの頭上を通り越して水戸藩に密勅が行って、プライドがズタズタになったんですよね。江戸時代を通じて、一大名に天皇から直接命令が下るなんてことは、ないですから。

 

*  *  *

 

安政の大獄のきっかけは様々なすれ違いだったんですね。

続きはぜひ、書籍でお楽しみください!

 

★山崎怜奈さんの内容紹介動画、Twitterにて公開しています★

関連書籍

山崎怜奈『歴史のじかん』

歴史やクイズなど、本人の幅広い興味を軸に、様々なフィールドで活躍を続ける山崎怜奈さんの初めての書籍は、2019年までひかりTV・dTVチャンネルで放送されていた「乃木坂46山崎怜奈 歴史のじかん」を基にした歴史本です。 全50回の放送から、山崎さんが選んだ14回を厳選して掲載しています。専門家の先生2名と山崎さんによる解説パートと、その内容から山崎さんが考えたことを綴るコラムパートの2本立てとなっています。 自らも歴史に詳しい山崎さんならではの視点で深堀りされているので、わかりやすいのに奥深い考察が満載。歴史好きな方もそうでない方も楽しめること間違いなしです。

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歴史のじかん

2021年2月10日発売、乃木坂46山崎怜奈さんの初めての書籍『歴史のじかん』に関する情報をご紹介します。

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山崎怜奈

1997年5月21日生まれ。2013年、乃木坂46加入。2020年、慶應義塾大学卒業。2022年、乃木坂46卒業。世界遺産検定2級、日本漢字能力検定2級などを取得。

TOKYO FM『山崎怜奈の誰かに話したかったこと』(月~木曜日午後1:00~2:55)、テレビ朝日『春菜ザキさんのタダの通販じゃねーよ!』(日曜日朝10:30~11:00)などに出演中。著書『歴史のじかん』(幻冬舎)が発売中。

Twitter:@ymzkofficial

Instagram:@rena_yamazaki.official

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