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医者が教える 正しい病院のかかり方

2021.05.23 公開 ポスト

医師が教える、がんになったときの「病院選び」3つのポイント山本健人(医師、医学博士)

ネット上にあふれる、さまざまな医療情報。ついググってしまいがちですが、その中身は玉石混淆なのが実情です。そこでオススメしたいのが、現役医師の「けいゆう先生」こと、山本健人さんが上梓した『医者が教える正しい病院のかかり方』。ちょっとした風邪から、がん、薬の飲み方まで、お医者さんに聞きたくても聞けなかった情報が詰まっています。中身を一部、抜粋してご紹介しましょう。

*   *   *

ここでは、「理想的な病院の選び方はケースバイケースである」という限界を承知のうえで、一般論として以下の三つの選択肢を提案してみたいと思います。

(写真:iStock.com/millionsjoker)

(1) 近隣のクリニックに相談

初診では近くのクリニックを受診することのメリットが大きい、という点については、第一章でも説明した通りです。

たとえば、がんの検診で異常を指摘されたとき、クリニックの医師に相談することで、適切な病院を選んで紹介してもらうことができます。クリニックの医師は、日々必要に応じて患者さんを様々な病院に紹介しています。同じ医療圏に属する病院の、それぞれの強みを知っていることが多いでしょう。昔から代々同じ土地に開業している医師であれば、そうした情報により詳しくなっていることもあります。

患者さんが自力で調べるより、はるかに確実性の高い情報が得られるはずです。

(2) 自宅からアクセスがいい病院

病院選びには「自宅からの交通アクセス」がとても大切です。

治療を開始する前の元気なときには、「多少不便なところでも何とかなるだろう」と思いがちですが、交通アクセスの不便さは、後々大きなストレスになる恐れがあります。がんのように検査や治療に長い時間がかかることの多い病気の場合は特にそうです。

手術を受けるなら、術前検査のために何度も自宅と病院を往復する必要がありますし、術後も定期的な通院と診察、検査が必要になります。

最近は、化学療法(抗がん剤治療)も外来通院で行うのが一般的です。体調が万全とは言いがたい状態で、1週間や2週間に1回と頻繁に病院に通うこともあります。自宅から通いにくいと、自宅と病院との往復で体力を奪われ、予定通りの治療を続けるのが難しくなることもあります。

また、入院中は家族も頻繁に病院に来なければなりません。家族の来院の目的は、何もお見舞いだけではありません。手術中や、術前術後の病状の説明には、必ず家族の方に同席してもらい、一緒に話を聞いていただく必要があります。

さらに、患者さんに急な病状の変化があり、緊急手術が必要になったり、緊急で集中治療室に入らなければならなくなったりすると、必ず家族に連絡が入ります。病状によっては、元気に病院内を歩き回ることが難しい患者さんに代わって、家族が様々な事務手続きをしなくてはならないこともあります。

患者さんが病気で病院に長期的にかかることになったときは、「家族も医療スタッフから比較的よく病院に呼び出される」と思っておく必要があるのです。

(写真:iStock.com/upixa)

(3) がん治療の症例数が多い病院

病院は、ホームページ等で病気別に症例数を開示していることが一般的です。それを見ると、病院としての年間症例数は、誰でも簡単に知ることができます。よって、自分と同じ病気を診療した件数が多い病院を選ぶことは、難しくありません。

もちろん症例数が多いからといって、必ずしもその病気の治療に長けた病院だとは限りません。多くの手術症例数を誇る大病院でも、術後の死亡率が高いことが報道されて問題になったことが何度かあります。

しかし一方で、自分がかかった病気の治療が直近の1年でほんの数例しか行われていない、といったケースでは、その病気の治療においてやや専門性に欠ける可能性がある、と考えることはできるでしょう。

たとえば、日本膵臓学会が発行する「患者さんのための膵がん診療ガイドライン」では、「膵がんに対する外科切除術は、専門医がいて手術の実施数が多い施設では手術後のトラブルが少ない」と書かれています。

ただし、勤務する医師が数年ごとに入れ替わることは多く、専門性の高い医師の赴任によって症例数が大きく変化することはよくあります。「〇〇先生が△△病院に赴任した」という情報をきっかけに、その医師の専門とする病気の患者さんの紹介が増える、ということがあるためです。

その点で、「過去の症例数が多いからといって、将来もその豊富な症例数が維持されるとは限らない」という難しさはあります。

またがん治療は、専門性の高い医師がいればそれだけで成立する、というものではありません。抗がん剤や緩和ケア、リハビリなどに関わる専門のスタッフがいること、がん患者さんからの相談を受け付ける専門の部署(がん相談支援センターなど)があること、地域の診療所との連携がうまく取れていることなど、がん診療の質の向上には、多方面に充実した体制が求められます。

実際、厚生労働省が指定する「がん診療連携拠点病院等の指定要件」にも、こうした厳しい条件が含まれ、かつ状況に合わせて見直されています。こうした点も、ホームページ等で確認することは可能でしょう。

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関連書籍

山本健人『医者が教える 正しい病院のかかり方』

世の中には様々な医療情報があふれているが、その中身は玉石混淆。命の危機につながる間違った情報も少なくない。そして病院に行ったら行ったで、何時間も待って診療は数分、医者に聞きたいことがあっても聞けない、説明されても意味が分からない等々、患者側の悩みは尽きない。私たちはどうしたらベストな治療を受け、命を守ることができるのか? 正しい医療情報をわかりやすく発信することで、多くの人から信頼される現役医師が、風邪からガンまで、知っておくと得する60の基本知識を解説した、医者と病院のトリセツ。

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医者が教える 正しい病院のかかり方

風邪からガンまで。命を守る60の選択を、外科医けいゆう先生が解説。

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山本健人 医師、医学博士

2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営。Yahoo! ニュース、時事メディカルなどのウェブメディアで定期連載。全国各地でボランティア講演なども精力的に行っている。著書に『医者が教える 正しい病院のかかり方』『がんと癌は違います』(共に幻冬舎新書)、『患者の心得 高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと』(時事通信社)ほか。

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