ネット上にあふれる、さまざまな医療情報。ついググってしまいがちですが、その中身は玉石混淆なのが実情です。そこでオススメしたいのが、現役医師の「けいゆう先生」こと、山本健人さんが上梓した『医者が教える正しい病院のかかり方』。ちょっとした風邪から、がん、薬の飲み方まで、お医者さんに聞きたくても聞けなかった情報が詰まっています。中身を一部、抜粋してご紹介しましょう。
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頓服と定期薬の違いとは?
「定期薬」と「頓服」の違いや、「食前」「食後」「食間」など、飲むタイミングを表す言葉の意味は、意外に知られていません。「頓服」を痛み止めや熱冷ましのことだと誤解している人もいますし、「食間」を「食事中」のことだと誤解している人もいます。
「頓服」とは、決まったタイミングで服用するのではなく「症状が出たときだけ飲む薬」のことです。たとえば、ロキソニンやカロナールなどに代表される痛み止めは、「痛みがあるときに飲む」といった使い方をしますね。
「頓服=痛み止め、熱冷まし」と誤解している方がいますが、頓服は薬の種類ではありません。「飲み方」の名前です。痛み止めだけでなく、様々な種類の薬を頓服として使います。
「症状が出たときはいつでも飲んでいい」とはいえ、副作用の危険性を考えると使用回数に上限を決めておかなくてはなりません。そこで、頓服を処方するときは、「○時間おき」「1日◯回まで」といった回数制限を設けるのが原則です(睡眠薬の場合は夜間しか飲まないため例外ですが)。
たとえば痛み止めなら、「6時間おき(=1日4回まで)」といった形式が一般的です。もしこの間隔を待てないくらい症状が強い、薬が効かない、という場合は、担当の医師に相談し、効果の持続時間が長い薬に変更してもらったり、定期的に飲む薬に変更してもらったりする、といった対応が必要になります。
頓服は、基本的には「症状を一時的に抑えること」が目的です。病気の根本的な治療を目的とする場合は、症状のあるなしにかかわらず定期的な薬の使用が必要になります。何より、「自覚症状はないのに体を蝕んでいく病気の方が多い」ということにも注意が必要です。そこで、「定期薬」が必須になります。
「定期薬」とは、その名の通り症状に関係なく定期的に使う薬のことです。「定期処方」とも言います。世の中の薬の大半はこちらです。
頓服は、「症状が出たときだけ飲む薬」でした。これが役立つのは「症状がある病気」に対して使うときだけですが、病気の中には自覚症状がまったくないものもたくさんあります。高血圧や糖尿病、脂質異常症には自覚症状がありません。これらは、検査をしない限り異常であることは誰にも分からないため、症状の有無にかかわらず常に値を基準範囲に維持しておく必要があります。
そこで、「1日3回、毎食後」「1日1回、朝食後」というように、定期的に決められたタイミングでの使用が必要になるのです。
食前、食後、食間はどう違う?
さて、定期処方の薬には、「食前」「食後」「食間」といった、使用するタイミングの指示が必ずあります。これらはどういう違いがあるのでしょうか?
まず、「食前」とは、胃の中に食べ物が入っていないときのことです。一般的には、食事の20~30分前から1時間くらい前の範囲を指します。
一方「食後」とは、胃の中に食べ物が入っているときです。一般に食事の後、20~30分以内を指します。これが最も多い飲み方です。胃に負担をかけやすい薬や、食べ物と一緒に飲んだ方が効率良く吸収できる薬などでこの方法を選びます。
飲み忘れを防ぐ目的で「食後」を指定することもあります。
定期的な内服が必要な薬では、時刻を指定したり、「○時間おき」とルールを決めたりしても、それをきっちり暗記しておくのは大変です。しかし、食事は誰しも1日3回、ほぼ定期的にするものです。あえて食後に飲むと決めておくことで、飲み忘れを防ぐことができます。
食事の影響を受けない薬はたくさんあるため、こういう薬は、飲み忘れ防止のために食後に指定する、というパターンが多いのです。定期的に飲んでもらうための一つの策だということです。
一方「食間」は食事と食事の間のことで、一般的には食事のおよそ2時間後が目安です。「食事中」ではありません。あまり多くはありませんが、空腹のときに吸収が良い薬や、食事の影響で薬の吸収が変化してしまう薬でこの方法が選ばれることがあります。
薬の飲み方にはすべて、合理的な理由があります。しかし、自己判断で1日やめてみたり、「副作用が心配」と言って勝手に量を減らしたりする人が多くいます。飲み方を守ってきっちり飲まないと、効果が得られないどころか逆に副作用が目立ったり、不調の原因になったりするなどして大変危険です。
また、中止するときは徐々に量を減らさなくてはならない薬もあります。必ず指示された飲み方を守ることが大切なのです。
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