人の悲しみを癒すのは時間だとよく言われるが、そのために必要な時間の長さは誰も教えてくれない。
きっとそれは個人差の問題で、一時間で癒える人もいれば百年癒えない人もいる。わたしの場合はどうだろう。他者の喪失については、それなりには経験済みだけれど、母の喪失は初めてで、まだその感情との兼ね合いに四苦八苦している。
どうしてもそのことばかり考えてしまうから、なるべく仕事に没頭する。でもなんにも上手く書けない。今のわたしの書きたいことはあまりに個人的過ぎて他者への言葉に変換されない。伝えたい言葉はすべてもう届かない人へのものだ。
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愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。