生き方
「というわけで、わたしはここにいる、逆さまになって、ある女のなかにいる。」
ギョッとするような書き出しで本書は始まる。けれど、このひと文で、一気に物語に引き込まれてもいく。主人公は、トゥルーディという女性のお腹のなかにいる「胎児」。臨月を迎えている。トゥルーディの髪は“麦わら色の金髪”で、 “リンゴの果肉みたいに真っ白な肩”まで垂れている。そして、目は緑色で、鼻は“真珠のボタン”みたいである。若さに似合ったチャーミングな女性のようだ。胎児になぜそのようなことまでわかるかというと、トゥルーディの夫が詠む詩や、周囲の人が発する言葉によって、母のイメージを作りあげているからである。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
本の山の記事をもっと読む
本の山
- バックナンバー
-
- 勝敗を超えたところに見るものは -『いま...
- 奇談好きなリーダーが導く新たな生きる活力...
- 辛い状況にあっても新しい道を切り拓く家 ...
- 「なぜ写真を撮るのか」をしっかり知るべき...
- 引退競走馬の未来に光が当たるということ ...
- シンプルな行為の中にも人それぞれの思いが...
- 当事者による文学が問う健常者の「無意識の...
- 事実を知ることは人の命を尊ぶこと -『黒...
- いちばんしたいこととはいちばん大切なもの...
- 知らない世界だからこそ自由に想像できる ...
- 守りきれたものは、いずれかたちを変えて自...
- サーカス - 誰しもが自分の居場所を見つ...
- 物語と料理が一体となって、読者の記憶に残...
- 北の大地を舞台にした熱気溢れる壮大なドラ...
- 「初心者目線」を保ち遭難者を発見する -...
- 「ものを書く」行為に突き動かされる理由ー...
- 大切なものを手放すことの難しさ -『よき...
- 各国の歴史的背景を学び、死刑の是非を自ら...
- 現実世界にも通じる奮闘を応援せずにいられ...
- 偽りの巡礼者 稀有な旅人の喜び -『天路...
- もっと見る