編集長より
講談社の元取締役・鷲尾賢也さんが、さる2月10日に急逝されました。69歳でした。
私が「新書」という存在を知り、最初に親しんだのが、当時クリーム色のカバーの講談社現代新書。後になって知ったことですが、その頃の編集長が鷲尾さんでした。
鷲尾さんと直接知り合ったのは、私が以前に勤務していた会社で新書の創刊に携わったときです。その後、幻冬舎新書の仕事をする今に至るまで、社の壁を越えたお付き合いが続きました。
正直、まだその不在を受け止めきれずにいます。でも、肉体が失われても、私にとっての鷲尾さんは、人文書界の仰ぎ見る先輩であり、拠りどころとなる存在です。新書をとりまく状況がどう激変しようと、それは変わりません。
私的なことを書かせていただきました。失礼しました。
幻冬舎新書の3月刊は、こんなラインナップで元気に発売です!
2014・3月発売
日本人はなぜ美しいのか
枡野俊明著 定価(本体740円+税)
日本庭園、和食、茶の湯……など、日本の古き良き文化はいずれも美しく、世界の憧れ。こうした日本の美の根底にあるのが、禅だ。禅では、ムダをそぎ落としたもの、移ろいゆくもの、未完成のもの、慎ましやかなものを美しいとしており、西洋の価値観とは真逆。禅僧であり、「禅の庭」を多数手がける庭園デザイナーでもある著者は、日本人が、独自の美の楽しみ方を知っていると説く。「いびつな茶器」「石ばかりでできた庭」「一輪だけ挿した花」「水鉢に映る月」などを愛でるのは日本的。日本人が古来持つ美的センスを再確認する一冊。
編集後記
著者・枡野俊明さんは禅僧ですが、同時に、庭園デザイナーとしての顔もお持ちです。日本はもちろんのこと、こちらにあるように、カナダ、ドイツ、シンガポール他、海外でも「禅の庭」をたくさん手掛けています。
さて、幻冬舎から出版した『禅が教えてくれる 美しい人をつくる「所作」の基本』が大ヒットしたので、その続編『禅が教えてくれる 美しい時間をつくる「所作」の智慧』の打ち合わせで、お寺に御邪魔したときのことです。「海外から、ご自分の敷地に禅の庭をつくりたいとメールが来ましたよ。調べたら、IT企業の実力者として、世界的に活躍している方でした」と枡野さんがおっしゃるのです。それから数カ月後、その方のプライベートジェットがお迎えに来て、枡野さんは、イギリスのマン島まで、庭園造りのために飛ぶことになります。
それにしても、スティーブ・ジョブズしかり、IT企業の世界的トップがこぞって、禅や日本に興味を持つのは大変興味深いこと。彼らの目には、どんなふうに映っているのでしょうか。「日本の美しさとは何か」――を考えるときに、比較するのが一番わかりやすい。枡野さんは、禅の教えを基本にしつつ、西洋文化と比較しながら、日本人の美的感性について説明してくださいました。ぜひ本書を読んでください。知れば知るほど、「なるほど!」が重なっていきます。なぜ京都にある石庭に心を奪われるのかもわかるし、なぜアップルの製品が美しいのかもわかる。
日本人は、自分たちの持つ美への理解を“なんとなく”ですませている。逆に、そこに新鮮さを感じた海外の人は、理論的に理解して、気に入ったところを“自分のもの”にしていったように思います。日本人にとって当たり前にある美だから、これまで我々は感覚的に理解してきたのでしょうが、一度、この誇るべき「日本の美」を整理すべき時なのだと思うのです。そうしないと、守れるはずのものも、守れないですから。
担当・袖山
2014・3月発売
大学教授がガンになってわかったこと
山口仲美著 定価(本体800円+税)
一度目の大腸ガンは早期発見し手術もうまくいったのだが、四年後に膵臓ガンを発症。現在抗ガン剤治療中の大学教授が、この二度のガン患者経験を踏まえて、病院を選ぶ時、ベッドが空かなくて入院できない時、セカンドオピニオンがほしい時、執刀医の実力を知りたい時、主治医と合わない時、抗ガン剤をやめたくなった時、いじわるな看護師に当たった時、どう考えどう振る舞うべきかをレクチャー。「先生にお任せ」ではなく、自分で決断する「賢いガン患者」になるための手引き書。
編集後記
最初に山口仲美さんにお目にかかったのは、10年近く前のことでした。ご著書『犬は「びよ」と鳴いていた』をとても面白く拝読して、日本語の本をお願いしました。昨年お電話をいただき、「ガンになった経験を書いたのよ」とお聞きし、びっくりするやら悲しいやら。原稿を拝読すると、自分がガンになった時に役立ちそう!! と思い、飛びつくように本にさせていただきました。非常時にどう行動し考えるか。山口さんのご経験を通じて、自分なりの方法がみつかりそうです。一度きりの人生、医者任せ、病院任せでやり過ごすより、意志をもって病気に臨みたいものだなぁ(できるかなぁ)。抗がん剤治療を続けながら、最後の最後まで丁寧に本作りに関わってくださった山口さんの姿勢から学ぶこともたくさんありました。
担当・大島
2014・3月発売
悪の出世学 ヒトラー、スターリン、毛沢東
中川右介著 定価(本体840円+税)
権力を握ることが悪ではないが、激しい闘争を勝ち抜き、のし上がった者に〝ただのいい人〟はいない。本書は歴史上、最強最悪といわれる力を持った三人の政治家――スターリン、ヒトラー、毛沢東の権力掌握術を分析。若い頃は無名で平凡だった彼らは、いかにして自分の価値を実力以上に高め、政敵を葬り、反対する者を排除して有利に事を進め、すべてを制したか。その巧妙かつ非情な手段とは。半端な覚悟では読めない、戦慄の立身出世考。
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幻冬舎新書は、2カ月に1回、奇数月の30日発売です。このコーナーでは、刊行を先取りして、ラインナップや読みどころをご紹介します。
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