数々のプロアスリートを顧客に持つパーソナルトレーナー清水忍氏の書籍『ロジカル筋トレ』(幻冬舎新書)が発売即重版となり、話題を呼んでいる。
ここでは本書の一部を抜粋して紹介する。プロでさえ陥りがちな「ざんねん筋トレ」の罠とは?
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結果が出る人は「なぜ」を考えている
なぜ、これをやるのか──。
どんな仕事や作業でもそうだが、「なぜやるのか」の理由をわかってやっている人とそうでない人とでは非常に大きな差がつく。
なにも考えず、決められたメニューを日々こなしているだけでは、なかなか成長が得られないし成果も望めない。
一方、自分がやっていることがなんの役に立ってどんな結果を生み出すのかといったことを日々考えて取り組んでいる人は、より成長が促されやすいし、より成果も上がりやすくなる。
筋トレでは、こうした「差」が非常に露骨にあらわれる。
身体パフォーマンスを引きあげるにしても、ボディメークで体を磨きあげるにしても、筋トレで「自分の望むもの」を手に入れられるかどうかは、「なぜ」を考えているかどうかで決まると言っていい。
「なぜ、このトレーニングが必要なのか」「このトレーニングで自分のなにが鍛えられるのか」「なぜ、ここを鍛える必要があるのか」「なぜ、このフォームなのか」「このトレーニングは自分の目的に合っているのか」──。
こうした「なぜ」をしっかり考えてトレーニングをしている人は、最短距離で自分の望むものへと近づくことができる。
反対に、「なぜ」をまったく考えていない人は、とんでもなくムダな遠回りをして、自分の望むものに近づくのに長い時間と労力を要することになる。
近づくどころか、パフォーマンスが落ちたりケガをしやすくなったりして、逆に遠ざかっていってしまうこともあるかもしれない。
あなたは「ざんねん筋トレ」で損をしてはいないか
昨今は筋トレブームだと言われる。本や雑誌ではさかんに筋トレが取りあげられ、NHKでは筋トレ番組が流れ、ユーチューブでは数えきれないほどの筋トレ動画を見ることができる。
学校の部活動でもだいぶ筋トレを重視するようになってきているし、フィットネスクラブやスポーツセンターなどで筋トレに取り組む人も、昔とは比べものにならないほどに増えた。
しかし、こうしたブームの中、トレーニングにいそしんでいる人々の様子をかたわらから見ていると、一生懸命がんばっているのにもかかわらず、とんでもなくムダな遠回りをしてしまっている人がたいへん多い。
正直に言うと、私の目から見るとほとんどの人が“ああ、もったいない! ”“うわ、どうしてそのフォームで! ”“えっ、なんでそんな意味のないやり方を……”と思わず叫びたくなるような筋トレをしている。
しかも、一般の人々だけではなく、日々トレーニングで体を鍛えているはずのアスリートにも、まちがったやり方や意味のないやり方をしている人が目立つのだ。
つまり、非常に多くの人がトレーニングへの取り組み方をはきちがえていて、「自分の望むもの」をなかなか手に入れることができない筋トレ──「ざんねん筋トレ」に終始してしまっているのだ。
みなさんの場合はどうだろう。
もしかして、みなさんも「ざんねん筋トレ」をしてはいないだろうか。「なぜ」を考えず、意味のないトレーニングや非効率なトレーニングをして、途方もない遠回りをしてしまってはいないだろうか。
「ざんねん筋トレ」チェックテスト
では、ここで簡単なチェックをしてみよう。
「ざんねん筋トレ」をしている人は、日々のトレーニングで次に挙げたような思考パターン・行動パターンに陥っていることが少なくない。ぜひ、胸に手を当てながら、自分に当てはまるかどうかを振り返ってみてほしい。
□ 筋トレは「何キロ上がるか」がいちばん気になる
□ つらくてフォームが崩れてきても、がんばって回数やキロ数(重量負荷)をクリアすることのほうが大事だと思っている
□「ベンチプレス150キロ」「腹筋1000回」といった人の話を聞くと、そのすごさにあこがれてしまう
□ バーベルを10回上げると決めたら何としても上げたい
□ 部活動では「腹筋30回」「腕立て伏せ30回」といったお決まりのメニューを何の疑問も持たずにやってきた
□ 監督やコーチから「いいからやれ」「つべこべ言わずにやれ」と言われたら、素直に指示に従ってきた
□ 試合でのパフォーマンスを上げるのが目的で筋トレを始めたけれど、だんだんトレーニングのおもしろさにハマってしまい、いまでは「筋トレをすること自体」が目的になってしまっている
□ 筋トレは、とにかくがむしゃらにがんばってやりきるものだと考えている
□ どんなフォームであろうと、筋トレをやらないよりはやるほうがましだから、見様見まねの自己流でやっている
□ 腹筋をガチガチに硬くすれば、パフォーマンスが上がると思っている
□ 腕立て伏せやスクワットは、体を上げ下げするエクササイズだと思っている
□ 上半身の筋肉を鍛えるのが目的なら、下半身を鍛えるメニューはやらなくてもいいと思っている
□ フィットネスクラブでは、インストラクターに言われたメニューを言われたままのやり方でやっている
□「このトレーニングにはどんな意味があるのか」なんて考えず、ひたすら無心で汗を流している
□ 筋トレに計画性やプランなど必要ない
□ 筋トレのフォームが合っているかどうかなんて気にしたこともない
いかがだろう。ひとつでも当てはまれば、「ざんねん筋トレ」の危険性大だ。
おそらく、「けっこうな数の項目が当てはまった」という方が多いのではないか。また、これらの項目のどこが“ざんねん”なのかが分からず、疑問だらけで納得のいかない顔をしている人も多いかもしれない。
みなさんのこうした疑問については、本書で順を追ってお答えしていくことにしよう。
これまで何も考えず漫然とトレーニングをしてきた人は、ロジカルなトレーニングを身につけていけば効率や成果が驚くほどに変わってくる。
その変化は、ボテボテのゴロしか打てなかった平凡なバッターが、見ちがえるようにホームランを打ち出すくらいの劇的インパクトをもたらすはずだ。
それに、変わるのは効率や成果だけではない。普段からロジカルに考えてトレーニングをしていると、人は生まれ変わったようにスムーズに体を動かせるようになる。
体が疲れにくくなり、痛みなどの不調が消え、毎日をより快適に過ごせるようになっていく。
また、体がスムーズに動くと、心にもよい影響が現われ、仕事に意欲が湧いたり、集中力が増したり、新しいことにチャレンジしたりするようにもなっていく。
言わば、トレーニングによって、さまざまなフィジカル的・メンタル的メリットが得られるようになっていくのだ。
みなさんもロジカル性を取り入れてトレーニングしていけば、こうした数々のメリットを得て、大きく変わっていくことができる。
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2021年3月25日発売の幻冬舎新書『ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える』(清水忍氏著)の最新情報をお知らせいたします。