「今の世の中の常識のようなものの中で生きづらさを感じている人へ――」
銀色夏生さんが今の想いを込めた最新刊『私たちは人生に翻弄されるただの葉っぱなんかではない』より、メッセージをお届けします。
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深く沈んでいつか浮かんでくる愛情
最近、私の母のことや小さい頃のことを話していて、またふと昨日思い出したことがありました。
ちょっと風変わりな家庭というか母親の元で育ったのですが、そういう中で も、私たち兄弟姉妹がこういうふうに強くいられている一番大事なことを言う のを忘れていました。肝のようなもの。
それは、父親からも少しはそうだと思うんですけど、特に母親からの本能的 な愛情というのがすごくあったんです。本能的で無心な愛情、それは母自身も無自覚な本能的なものだと思うんですが。それを、私たち兄弟姉妹は注がれていたと思います。
なので、私は、根が頑丈というか、何かが強いんだと思います。多分それが 芯にあるので、いろいろと困ったことや変わったことがあったとしても、何か こうビクともしないようなところがあります。だから愛情があれば大丈夫だと 思います。
でも、こういうふうに言うと、自分はそういう愛情をあまり受けなかったっ ていうような人がいると思います。それだったらもう自分はもともとダメなん だ、って思われるかもしれませんが、違います。
愛情部分がちょっと欠けた親に育てられる子供もいます。親自体に愛情というものが未発達な。だけど、そういう歪な形の愛情を受けた子供っていうのは、ずっと後になって、すごく大人になってから、歪な形の愛情によって知る愛情があるのではと思います。
愛情の形っていろいろあって、複雑な形の愛情もあるんですよね。それは、若い時にはわからないんだけど、歳を取るとわかるというか。未熟な愛情がわ かるって、すごく深いことなので、若い時はわかりづらいんです。でも、ずっと後になって、すごく深いところでわかってくるような気がします。
深く沈んだものは、浮き上がるのに時間がかかるけど、やがていつかずっと 経ってから浮き上がってくる。そして、その水面から青い空を見ることができ る、そういう気がします。