「今の世の中の常識のようなものの中で生きづらさを感じている人へ――」
銀色夏生さんが今の想いを込めた最新刊『私たちは人生に翻弄されるただの葉っぱなんかではない』より、メッセージをお届けします。
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スピリチュアルなことはその意味することだけを
自分の価値観や生き方がはっきり決まると楽ですよね。早く決まる人もいれ ば遅く決まる人もいる。
私はわりと遅く決まるタイプでした。なぜなら研究しなくてはいけなかった から。
揺らぐことなく、人がどう言ったからって変わらない、人に迎合しない……、昔からそういう部分はあったけど、全部がそうではなくて。仕事に関してはそうだったけど、私生活に関してはわりと揺らいでいるというか。決定に慎重で、 本当かどうか疑っていて、どちらかというと「自分をなくす」的にやっていま した。
やっぱり価値観とか生き方がはっきり決まっていると、もう自分はこうなん だって言えばいいわけです。そうしたら、小さいことであれこれ言う人のこと も気にならなくなるし、潔く生きられます。
私は、40歳をちょっと過ぎたくらいの時に、死というものをより深く考え続 けて、死に対する恐怖心が薄れました。
スピリチュアルなことを考えるとすごく気持ちがいいので、とても楽になっ て、あまり世の中のことに右往左往しないというか、人が言うことをごちゃご ちゃ考えないで済むような、何かこう爽やかな気持ちになった時期がありまし た。
スピリチュアルなことだけに目を向けた時って、「いや~もう幸せだわ」な んて思いますが、そこからがまた大変なんです。つまり、自分はひとりで幸せな感じでいられるけど、今自分がいる環境は現実なので、急に自分だけスピリ チュアルに目覚めても、現実社会の中で実際は生きていかなくてはいけないわ けで。すごい葛藤を感じるんです。
私は40歳過ぎにそうなって。その後は、しばらく高揚感みたいな感じで、数年ハッピーというか、どんな困難でもやってこい、ってほどいい感じだったけど、やっぱりそれだけだと、現実と乖離しちゃうんです。だから現実世界と自分のスピリチュアル感みたいなものとをすり合わせながら、だんだん今にいた ったという感じです。
スピリチュアルなことに目覚めて何となく違う感覚を得たあとに、これからどうやってこの世の中とうまくやっていけるか、を考える段階に入ります。
そこからは、そのスピリチュアル感で生きていけるような環境を作り始める 時期になります。なぜなら、全然違うところに、違う気持ちでいるのは苦しい から。環境作りこそが大事なんだと思いました。
それには時間がかかります。人間関係もそう。今自分が生きている環境を再構築するようなものなので、人と離れることにもなるし、新しく出会ったりも する。長く続けていたことをやめたり、興味を失ったり、意外なものに心惹か れたり。
そうやる中でいろいろと考えたり、工夫したり、ぶつかることによって、自分が感じていたスピリチュアル感も本当に試され、世の中、現実ということも また新しい角度でわかっていきます。
私はそういうふうに思い始めてから20年くらい経った今、もうあまりスピリチュアルスピリチュアルって言わなくなりました。さまざまなスピリチュアル な人や物事に心惹かれることも、もうありません。スピリチュアルなことは、その意味するところだけを心に秘めて、普通の言葉を使って日常を送りたいと 思っています。
普段の生活の中で気持ちを安らかに保っていけるよう、自分の生き方と環境 を整えていきたいと思いながら、私は今ここにいます。