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この一言で「YES」を引き出す格上の日本語

2021.05.13 公開 ポスト

伯父/叔父の違いは年上か年下か山口謠司

「あんなぞんざいな言葉遣いをする人間には任せられない」

誰かの言葉を聞いてそう思ったことはありませんか?
逆に、誰かにそう思われているかも?

言葉にはこれまで培ってきた知性、教養、品性、性格、考え方が宿ります。言葉の感覚を磨く、すなわち「語感力」を鍛えるのは、ビジネスでも必須の要素。『この一言で「YES」を引き出す格上の日本語』より、語感力を鍛えるための言葉の知識を抜粋してご紹介します。

親より年上か年下かを覚えておけば間違わない

「おじさん」とひらがなで書けばまったく問題はないのですが、いざ、漢字で書こうとすると「伯父」「叔父」、どっちを書けばいいのか迷ってしまうという人は少なくありません。

ある時、学生に、この違いを知っているかと聞くと、こんなふうに答えた人がいました。

「伯父」は父方の「おじ」に使い、「叔父」は母方の「おじ」に使う。

もちろん、これは間違いです。

(写真:iStock.com/AGSTOCK1)

答えを先に言いましょう。

「伯父」は、自分の父親もしくは母親の兄に対して使います。

「叔父」は、自分の父親もしくは母親の弟に対して使います。

父方、母方の違いは、まったく関係ありません。

 

さて、それでは「伯」と「叔」とは、どんな違いがあり、何に基づくものなのでしょうか。

その答えは、古代中国の兄弟の名前の付け方にあります。

我が国では、長男、次男、三男、四男と続く兄弟の名前を付けるのに、「太郎(一郎)、次郎(二郎)、三郎、四郎」と、番号を振る方法を多く使います。

これに対して、古代中国では、「伯、仲、叔、季」という漢字を使って、兄弟の順番を付けていました

ですから、たとえば、「伯夷」「仲尼」「叔斉」「季路」という名前の人がいるとすれば、それぞれ、「伯夷」は「長男である夷という名前の人」「次男である尼という名前の人」「三男である斉という名前の人」「四男か末っ子の路という人」といったことがすぐに分かるのです。

この「伯、仲、叔、季」による兄弟の生まれ順は、我が国でも奈良時代や平安時代に使われたことはありますが、分かりやすさを優先して、平安時代末期頃には「太郎(一郎)、次郎(二郎)、三郎、四郎」が広く使われるようになっていきました。

(写真:iStock.com/paylessimages)

ただ、「おじ」と日本語で言う場合、どうしても自分の父親や母親より年上か年下かを区別する必要がある場合もあります。

とくに相続に関する書面などでは不可欠でしょう。このような場合に、「伯」と「叔」という中国の兄弟の順番を表す漢字が使われる伝統が残されたのです。

とは言っても、自分の父親・母親が二番目、三番目、四番目に生まれたことを示す中国式の厳密な「仲、叔、季」は採用されませんでした。

どんな順番で生まれていても、父親・母親より年上であれば「伯父」、父親・母親より年下であれば「叔父」とだけ区別するのです。

もちろん、これは「おば」も同様です。

 

ひとつつけ加えておきます。

まったく血縁関係のない「おじさん」の言い方があります。この場合は、「小父さん」と書きます。これは江戸時代に、年を取った血縁関係のない「おじいさん」を「大父」とする書き方があって、「おじいさん」ほどでもないが、自分より年上の「おじさん」を「小父さん」と書いた名残りです。

日本語には親近者を区別する言い方が様々あります。こうした言葉を使い分けるのも語感力を伸ばす一歩ではないかと思います。

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この一言で「YES」を引き出す格上の日本語

「あんなぞんざいな言葉遣いをする人間には任せられない」

誰かの言葉を聞いてそう思ったことはありませんか?
逆に、誰かにそう思われているかも?

言葉にはこれまで培ってきた知性、教養、品性、性格、考え方が宿ります。言葉の感覚を磨く、すなわち「語感力」を鍛えるのは、ビジネスでも必須の要素。『この一言で「YES」を引き出す格上の日本語』より、語感力を鍛えるための言葉の使い分けを抜粋してご紹介します。

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山口謠司

大東文化大学文学部准教授。1963年長崎県生まれ。博士(中国学)。
大東文化大学大学院、フランス国立社会科学高等研究院大学院、ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。専門は、中国文献学。
難解な言葉を分かりやすく解説するスタイルが話題を呼び、『世界ふしぎ発見』や『林先生が驚く初耳学!』などテレビ番組出演も多数。
『日本語を作った男』(集英社インターナショナル)で2016年度和辻哲郎文化賞(一般部門)受賞。
ベストセラー『日本語の奇跡』『ん』(ともに新潮社)、『てんてん』(KADOKAWA)、『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)など著書多数。

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