厚生労働省の2018年の調査では「睡眠で休養が十分にとれていない」人の割合は21.7%。日本人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えています。自身も不眠症に長く悩まされた経験を持つ精神科医の岡田尊司さんが、睡眠のメカニズムや不眠症克服の極意を解説する幻冬舎新書『人はなぜ眠れないのか』より、睡眠の質を上げるための基礎知識やTipsをご紹介します。
眠れない時間を活用する
眠らないといけないと思いすぎることで、かえって眠りに見放されてしまう。眠りは、求めようとしすぎると、逃げていく性質をもっている。この性質をうまく利用して、時間を有効に使いつつ、よい眠りを効率よくとる方法を紹介しよう。
2つとも、私が長年実践し、不眠症の克服に役立ってきた方法である。
1つは、読書催眠法である。就寝時間の一時間前には、仕事や勉強、テレビやパソコンといったものを止め、眠る準備を始める。
寝室の天井灯は消して、枕元(ベッドサイド)のスタンドライトだけを灯す。しかし、読書をするには十分の明るさを確保する。読む本は、古典的な本や、やや堅い内容の本がよい。古典的な名著に触れる時間に使うのが、お勧めである。こうした本は、なかなか難解であったり、翻訳が悪かったりして、読み進めるのに苦労するが、長い風雪に耐えただけあって、じっくり味読する価値がある。わくわくしながら、ページをめくるということには、あまりならないが、むしろそのほうが好都合なのである。
避けるべきは、小説のようなストーリーのある読み物である。こうした本は、面白くなってくると、それこそ止まらなくなってしまうので、睡眠を妨げてしまう。
古ぼけた、読みにくい古典を、2、3ページ読んだだけで、疲れているときなら、すぐに眠気が来るのが普通だ。だが、少しくらい眠くなったからといって、すぐに眠ろうとせず、もう少し眠気が確実なものになってから、眠るのがポイントである。手にもっていた本を、2、3回落っことすくらいになって眠れば、1分もかからずに寝入ってしまうだろう。
やや目が冴えている日でも、3、40分読んでいると、例のウルトラディアン・リズムの眠気の波がやってきて、次第に眠くなってくる。そこらを潮に、手元のスイッチでスタンドの明かりを消して眠る。
変な時間に眠ったり、濃いコーヒーを飲んでしまっていない限り、この方法で、睡眠導入は非常にスムーズになる。たとえ、1時間、2時間眠れなくても、その分、読書ができるわけだから、損はしない。
人はなぜ眠れないのか
厚生労働省の2018年の調査では「睡眠で休養が十分にとれていない」人の割合は21.7%。日本人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えています。自身も不眠症に長く悩まされた経験を持つ精神科医の岡田尊司さんが、睡眠のメカニズムや不眠症克服の極意を解説する幻冬舎新書『人はなぜ眠れないのか』より、睡眠の質を上げるための基礎知識やTipsをご紹介します。