人気占い師、真木あかりさんの新刊 『2021下半期 12星座別あなたの運勢』より、
<全体運>
何を受け取り、何を受け取らないか。
春から秋まで、鮮やかな山吹色やオレンジで花壇を彩るマリーゴールド。豪奢な名前は「マリア様のための黄金の花」という意味。開花の時期がとても長く、ヨーロッパで年にあるという聖母マリア由来の祭日にいつも咲いていることからつけられたのだそう。花言葉は聖母マリアのイメージから「信頼」や「変わらぬ愛」。しかし一方で、「嫉妬」「悲しみ」という花言葉もあります。これはキリスト教で裏切り者のユダが着ていた、黄色い服の色からの連想であるようです。愛のさまざまな局面では、信頼も嫉妬も、そして悲しみもあるのでしょう。それぞれは独立して起こるのではなく、共存もするのでしょう。しかしたとえば「さあ大好きなあの人に花でも贈ろう!」と思ったとき、「変わらぬ愛」のつもりでマリーゴールドのアレンジメントを贈って「えっ嫉妬!?」と思われたら、それはそれで大変そうです。サスペンスドラマであれば何かが起こるところです(そんなワケあるか)。
ちなみにこうした、花言葉同士がケンカしている花はけっこうあって、オダマキは「勝利」と「愚か」、ホウセンカは「心を開く」と「私に触れないで」という花言葉を、それぞれ持っています。
さて、こんな話を出したのは、この下半期のかに座の人が「何を受け取り、何を受け取らないか」ということと真摯に向き合っていく、そんなフェーズに入っているからです。2021年、あなたは「あなただから、お願いしたい」と何らかの役割に抜擢されたり、期待をかけられたり、はたまた誰かが苦労して得た大切で価値あるものをそっと抱き取るようにして受け取ったり、といったことが起こることになっています。たとえば、仕事や社会活動で責任ある役職やポジションを得る人は多いでしょう。プライベートで財産を相続したり、パートナーの収入が増えて家計が潤ったり、という人もいそうです。何が起こるかは人それぞれ、本当にまるで違うのですけれども、そこには誰かの「想い」があり、あなたはそれも含めて「受け取る」という行為をするのだろうと思います。
ただ、受け取るといっても、あなたにも選ぶ権利はあります。たとえばあなたがマリーゴールドだったとして、「変わらぬ愛」という花言葉を持つ花としての物語を生きるのか、それとも「悲しみ」の物語を生きるのか。花が持つ美しさや存在感は、人間が何という言葉をつけようがまったく変わることはありません。ただ、別々の言葉を受け取った瞬間、花は希望を託されたり、涙にくれながら見つめるものになったりと、まるで違う物語を生き始めます。
花の色があの物語を連想させるから。かたちがツバメのようだから。散り方が潔いから。ちぎったときに汁が出るから。そうした何らかの特徴を取り出して、言葉をあてはめたものが花言葉です。そして私たちは、花を手にプロポーズをしたり、感謝の気持ちを幾重にも重ねて花を飾ったり、置いたりします。人が誰かに期待をかけるときも、よく似た構造があります。個人の能力のなかから突出した特徴を見つけ、「あなたは非常に聡明で人望もあるから」と理由をつけて、「チームリーダー」という言葉で立場を与えようとする。でも、受け取るあなたは物言わぬ花ではありません。たとえば、あまりに自分にそぐわないと思えるのであれば、受け取る必要はないのです。期待をかけるのは勝手ですが、すべて受け取る必要はありません。これは期待だけでなく、オファーや金銭、財産など人から受け取るものすべてに当てはまります。
下半期、あなたは誰かに期待をかけられたり、大事なものを受け取ったりするでしょう。夏から秋にかけては特に、受け取るかどうかは慎重に検討したいところです。役職であれば、「できるかどうか」はあまり気にしなくていいでしょう。変に自分を小さく見積もったり、謙虚になりすぎたりする必要はまったくありません。意識したいのは「心にそむくものかどうか」です。「変わらぬ愛」の物語を生きたいのか、「悲しみ」の物語を生きたいのか。この点において、物言わぬ花になってはいけないのです。
さて、ここまではあなたが「受け取る」側のお話を書きましたが、逆にあなたが誰かに期待をかけて何らかのオファーをしたり、大切なものを渡したりする立場である可能性も、この時期には巡ってきます。この人なら、きっと大丈夫。きっと、見込んだ通りにうまくやってくれる。そんなふうに思いをかける相手との絆も生まれるのでしょう。
この人は自分の身内だ、と決めた人に対しては、徹底的に面倒を見てかかわりを持ち続けるのがかに座の人です。「守る」という言葉が、近いのかもしれません。そういう相手がいることを、何より好ましく思うのがかに座の人です。愛らしい花に選りすぐりの言葉をつけてその花が特別な物語を生き始めるように、あなたにしかできないオファーがきっとあるのだと思います。
ただ、夏から秋にかけては、あなたの期待は若干、大きくなりすぎるきらいもあるようです。「いや、それはちょっと」と言われてしまうこともあるかもしれません。可能性としてはふたつ。期待しすぎたこと、あるいは相手の自由度が少なかったこと、このどちらかではなかろうかと思います。後者であれば、交渉の見込みもあるのかもしれません。
きっとうまくいくだろうと思いますが、仮に断られたとしても、がっかりしすぎることはないだろうと思います。その人はその人で、自分が生きたい花言葉の人生があるのでしょう。あなたが見出した輝きは決して失われはせず、ずっとその人とともにあります。
人との「つながり」を強く求めるとき
2021年全体を通して、かに座の人は人とのつながりを強く求めます。かに座の人はもともと、身内と思った人は徹底的に信頼し、守り抜く強い愛情の持ち主でいらっしゃいます。友情にせよ、恋愛にせよ、家族愛にせよ、つながりは「特別」なのです。
そうしたかに座の人々が、「時間をかけて関係を作っていくこと」を考えるのが、この下半期です。そこではかに座の得意技である、「他者を自分の安全ゾーンに入れて守る」というやり方よりも、「生かし合う」という言葉がよく似合います。場合によっては、自分のかかわり方を改める、変えていく人もいるのでしょう。
人間の性格なんて、そうそう変わりません。以前、大学で心理学を学んでいた際に先生がこう言ったことがあります。「性格は変わりませんよ。そんなにコロコロ変わったら、そっちのほうが大変です。人格がなくなっちゃう。変わりたいと強く思って、長い時間をかけて努力をすればまた別ですが」
このことは「確かにそうだ」と深く納得し、長く記憶に留めるに至ったのですが、2021年のかに座はこの「長い時間をかけて努力をすればまた別ですが」の、レアケースの範疇うに入るかもしれません。そのくらい、深くかかわりたいと思える関係に出会えるのでしょう。今まで「好きなのにぶつかりあってしまう」という悩みを抱えていた人は、根本からそのクセを変えていくことになりそうです。相手と溶け合うようにして。
ちょっと蛇足かもしれませんが、上半期に誰かと深くつながったものの、残念ながら望まない結果になってしまったという方に向けても、少し書いておきます。もちろん、かに座の人が全員そうなるわけではないので、変に不安にならなくて大丈夫です。あくまで「そういう場合」ということで、お読みいただければと思います。
大きな痛手を負ったという方は、つらい思いをなさいましたね。つながりにスポットライトが当たるときだけに、そこにかける思いも例年以上だったかと思います。頑張っていらっしゃいましたね。
これはかに座の人に限った話ではないのですが、一度大きく騙された人が「もう絶対に、絶対に、ぜっっっっっっっっったいに騙されない!」と強く思いすぎると、また同じような目に遭ってしまう、ということは少なくありません。こういう状態のときは、まだ心は生傷だらけなのにすごく頑張っているのです。「今度こそ幸せになりたい」という思いが強すぎて、出会う相手を「この人なら幸せにしてくれるか」といった基準で見てしまいがちになります。好ましいと思うと自分にとっていいと思えるところしか見ないので、見る目がとにかく鈍ります。さらにいえば、人を人とも思わない人というのは、生傷が流す血のにおいを嗅ぎつけるのが得意です。
「もう騙されない」、そう思うときはまだ、傷だらけなんだと思います。まずは傷ついた自分を「悲しかったね」「つらかったね」と、うんといたわってやってください。そして、自分は大事にされていいのだ、大事にされる存在なのだということを、心に叩き込みましょう。そして、今かかわりのある目の前の人を、大事にしましょう。そうすれば、傷も少しずつ良くなってきます。誰と会っても心が萎縮せず「大事にされていい」という気持ちをベースに動けるようになれば、もうあなたは大丈夫です。
少し先のことになりますが、あなたは2021年12月29日から、ふわりと視野が広がっていくことになります。ここから、深いつながりの先にある広い世界にも目を向けていく時期がスタートするのです。人との深いつながりに徹底的に目を向けた時期を経て、さらなる成長を志すようになるのです。その日々においては「愛とは何か」「人生とは何か」といった、深い思索にふける人もいるのでしょう。そうした答えのない問いを自分の心に投げかけるとき、2021年に「自分を変えてまでも、つながりを強めたいと願った人の存在」が色濃く影響を与えていくのだろうと思います。誰かがくれた、美しい花言葉にも似た期待が、あなたをより強く優しく、活かし続けていくこともあるのだろうと思います。
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