人気占い師、真木あかりさんの新刊 『2021年下半期 12星座別あなたの運勢』より、
<全体運>
星の時間が満ちるとき
あ、めんどくさい。
そんなふうに感じて、コミュニティや友達からフッと離れたくなるときってないでしょうか。もしくは、気さくに誰とでも仲良くするよう心がけていつつ、深いかかわりを無意識のうちに避けてしまう、なんてこともあったりはしないでしょうか。
もちろんですが、これはあなたを冷たいと咎めたり「そういうことをしていると、孤独な老後になるぞ」と恐怖を与えたりするために書いているわけではありません。自由でハートフルな精神は周囲の人に愛されますし、孤独を飼い慣らす意義もわかっています。もし占い師にそんな怖いことを言われたら「ヘッ」と鼻で笑って、自分には関係のない思想だとサクッと切り離すでしょう(まあ、あとからネチネチ思い出したりもするのですが)。そうではなく、2021年下半期のあなたは、コミュニケーションにおける「めんどくささ」を、ちょっと受け入れることができるかもしれないというお話です。「それ、すごくめんどくさいですね」と言いつつも分け入って話し合っていく、いい機会を得られるかもしれないという「希望」です。
2021年全般を通して、いて座の人々は「コミュニケーションと学び」にスポットライトが当たっています。いつになく賑やかに、人とつながっている人は少なくないのではないでしょうか。コロナ禍で簡単に「会おうよ!」とはいかない時期ですが、それでもSNSやオンラインMTG等でいつも以上にコミュニケーションを楽しんでいたり、しんみりしたメッセージを送り合ったりしているかもしれません。
そうした調子の良さとは裏腹に、10月頃までは独特の「めんどくささ」が付きまとうように見受けられます。特に家族間のコミュニケーションが、あたたかくも煩わしく思えたり、「大事にすべき」と思うけれども仕事との兼ね合いでワーッとなってしまう、そんなことが増えるでしょう。
いて座はもともと、群れることを嫌う人々です。束縛されたり、仲間同士で忖度を求められたりと窮屈な状態になると、パッとその場から身を引くようなことをしがちです。もちろん無責任な逃げ方をすることはないのでしょうが、心のなかでは「とにかくもう会わずにいたい」という気持ちでいっぱいになるのです。ただ、この下半期のうち、10月くらいまではコミュニケーションにおいて「自分の殻を破る」ようなことを求められたり、したいと考えたりすることになるのでしょう。めんどくささと、向き合うようになるのです。
そもそも、私たちはなぜ、言葉を使って意思を伝えようとするのでしょうか。話すこと、聞くことをするのでしょうか。その理由は山ほどあるのでしょうが、「ひとりではできないことをするため」なのだろうと思います。愛であれ、仕事であれ、ひとりでは完成しないことを行うことで社会をつくる。そのために私たちは伝え、聞き、話すのですよね。2021年のいて座の運勢は「コミュニケーションと学び」にスポットライトが当たっている、と先ほど書きました。それは単にたくさん話すよとか、たくさん人と接するよということではなく、コミュニケーションの先に見える「やりたいこと」のビジョンが、たくさん見えてくるのだろうと思います。だから、話したい。だから伝えるし、フィードバックを聞きたい。そんな思いが、たくさん出てくるのでしょう。
ただ、だからといって「たくさんの人と交流しましょう!」という言葉には、いて座の人はちっとも心を動かされないだろうと思います。トライしたとしても、3日もすれば飽きて面倒になってくるのではないでしょうか。
ドイツの児童文学作家・ミヒャエル・エンデが著した『モモ』というファンタジー作品があります。ロングセラーの人気作品ですから、子ども時代に読んだという方も多いことでしょう。あらすじは省きますが、主人公のモモは非常に受動的な存在として描かれます。来るもの拒まずで起こったことを受け入れる。しかし友達が危機に陥ったとき、初めてみずから行動を起こすのです。
この様子を、臨床心理学者の河合俊雄さんは「自然(じねん)」という言葉で説明しています。自然とは、自(みずか)ら然(しか)らしむ、つまり「ひとりでに」「おのずから」という意味です。河合さんは「自」という字が「みずから」と「おのずから」というふたつの意味を持っていることに着目され、このように書いています。
「『みずから』は主体的な意志を表し、『おのずから』は物事が勝手にそうなるということを意味します。自然とは、その二つが合致する時のことなのです。『みずから』ばかりだと空回りし、『おのずから』を待っていると何も起こらない。しかし、その両方が合致する瞬間というものがある。それが自然であり、ホラのいう『星の時間』でしょう」
星の時間とは、物事がうまくいくタイミングのこと。「今だ」と思える時間のことです。早すぎもせず、遅すぎもせず。
2021年下半期のいて座は「みずから」と「おのずから」が一致する「コミュニケーションにおける星の時間」が訪れるのだろうと思います。言葉を尽くして語りたい、そう思えるものが見つかるのかもしれません。めんどくさいという気持ちを乗り越えて、伝えたいと思う人が見つかるのかもしれません。それが自分の殻を破る、真のタイミングなのだろうと思います。「ここは引きたくない」「めんどくさいけど、やりたい」、そんな気持ちが出てきたときは、「あ、星の時間が来たな」と思って、いつものやり方を変えてみてはいかがでしょうか。
学びを通して「星の時間」に近づいていく
いて座の2021年下半期において、もうひとつ重要な要素が「学び」です。この時期の学びはいて座の本質である哲学的思考とは少し異なるもので、たとえば語学や資格取得の勉強のように役立てることが前提の学びであることが多いでしょう。仕事で必要だからと専門領域の情報をざざっと集める、そんな時間を過ごす方も多いはずです。言ってみれば基礎学力を磨いていくのですが、これは単純に今だけの問題ではないはずです。広い好奇心、世界に目を向ける視野をもっともっと大きく広げていく。それは2022年に自分のルーツとなった思考とブレンドされることで「自分のもの」となり、2023年に世の中へ放たれるようになるでしょう。あなた独自のアイデアとして――そうした、一連の流れを意識して学ぶことで、単なる「情報のつまみ食い」に留まらない、意義のある学びとなりそうです。
ところで、コミュニケーションについて述べたところで「自分の殻を破る」と書きましたが、勉強においてもそれは同じことであるようです。中島敦の『山月記』では、博学で才能に恵まれた登場人物が、己の至らなかったところを「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」と表現するくだりがあります。
「己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった」
詩という志す道があっても他者とかかわって能力を磨こうとしなかった。かといって自分には才能があると思っているから、凡人たちと一緒にいることも耐え難い。そうした臆病な自尊心をこじらせて尊大な羞恥心という猛獣を飼い慣らすことができず、さまざまなものを傷つけておかしくなってしまった――というのが『山月記』の流れなのですが、学問にせよ仕事にせよ、師と呼べる存在の人や仲間と議論し、語り合い、切磋琢磨することでしか磨かれないものもあります。凡人と思う人たちからも、異なる価値観を学ぶことはできるでしょう。人に自分のレベルを見抜かれるのは恥ずかしいから、バカだと思われたくないからと他人とかかわらずにいては、結局のところ才能を活かせないどころか、悪くすると身を滅ぼすことにもなりかねません。
もちろんいて座の人がそうであるとは申しません。ただ、おそらく夏から10月あたりまでに伸び悩むことがあるとすれば、ひとりでやっていることの限界が見えてくる、ということが理由のひとつかと思います。思考の深さが足りない、断片的な知識の積み重ね以上にならない。そうした悩みを抱えるようなことがあれば、ちょうどいい見直しのタイミングと考えてみてはいかがでしょうか。それが「殻を破る」ということにつながり、さらには人から人へとご縁がつながり、「星の時間」のうち、おのずから起こる部分を培っていくのではないだろうかと思います。そう、おのずから起こることは、待っているだけでは何も起こらないこともありますが、自分から起こすベースを作っていくこともできるのですよね。そこに重要な役割を果たすのが、コミュニケーションなのです。夏から秋にかけては模索のとき、そして秋から年内はのびのびと、自分がやりたいことを追い求めていける時期にしていけるはずです。
12月29日、風向きが変わります。ここから2022年前半にかけて、あなたは「原点回帰」の時間を過ごすことになっています。たくさんの人とのつながりと学んだ結果をお土産にして、あなたは自分の原点――たとえば生きがいややりがい、モチベーションの源泉といったもの――を掘り下げていくでしょう。これまで得たものを自分の基盤にしっかりと打ち付けて、安心できる状況を作り出したいと考えるのですね。お土産が多ければ多いほど、自分の基盤は確かなものとなるでしょう。さまざまな人や状況も受け止められる、ふかふかの心も作ることができるでしょう。普段接する人の顔ぶれも、そこから生まれるコミュニケーションも、特別なものにしていけるのだろうと思います。
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