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特別企画

2014.04.29 公開 ポスト

『終電ごはん』DVD発売記念
佐久間宣行×岩井秀人×梅津有希子 鼎談
第3回 ツイッターに愛されたドラマ
岩井秀人/梅津有希子(編集者・ライター)/佐久間宣行

第2回の記事:夫婦の真実は、食卓の会話にあり

第1回の記事:一皿からストーリーを作るということ

 

テレビでお好み焼きがよく紹介される理由

梅津:私たちが特に苦労したのが、佐久間さんにとにかく「シズル感」と言われたこと。この本のレシピは、どうしても見た目が地味だから、テレビ映えするようなシズル感という言葉がなかなか難しかったです。

佐久間:テレビって独特なんですよね。だからタレが多かったり、湯気だったり、後は、照明でキラキラさせたりするんですよ。

岩井:動いているみたいなことですね。

佐久間:そうです。だから、卵かけご飯とかは、本当においしそうに見えるんです。

梅津:キラキラしますものね。

佐久間:そう。実際の味は、他のものとそんなに変わらなくても、卵料理とかはすごく映えるんですね。美味しそうに見えるから。

梅津:キラキラ見えるのは、なにか照明を工夫しているんですか。

佐久間:そんなにはしていないんです。どんな番組でも、料理を撮るときは、基本的に「クロスフィルター」というフィルターをレンズに入れることが多いんですが、それくらいですね。むしろ、湯気ものが難しかった。焼肉とかはすぐに湯気がなくなっちゃうんです。

梅津:なるほど。

佐久間:でも、卵かけご飯っていつまでもキラキラしているじゃないですか。ほかには、お好み焼きは、ソースがキラキラはねるから、おいしそうに見えるんです。

梅津:ああ、なるほど、なるほど。そのあたりがテレビと書籍づくりの差だなあって、とても思いました。

佐久間:特に難しかったのは、これが家庭料理だという点です。お店ものだと、調理のシーンが長く入りますが、ドラマにしても何しても、実は調理シーンの方が出来上がりよりおいしそうに見えるんですよ。完成品よりも焼肉を焼いているシーンとかね。

岩井:そうですね。

梅津:ああ、ジュウジュウって感じですね。

佐久間:だから、僕としては、調理シーンの絵をできるだけ入れられるように気を使いました。

 

若林さん、人見知りの壁

梅津:ちなみに、若林さんも若菜さんも、日ごろからお料理されているんですか。

佐久間:二人とも、そうなんですよ。最初に聞きました、そしたら3人とも「やる」と。

梅津:全然不思議な手つきはなくて、「あ、ちゃんと刻んでいる」と思いました。

岩井:よくお芝居をしながらできるなあと思いました。しゃべりながら料理ができていると、途端に生活感が出ますよね。

佐久間:手元も全部、本人たちの手です。だからスケジュールが大変だったんです

梅津:フードコーディネーターさんの手元に差し替えようと思わなかったんですか。

佐久間:それをやると嘘くさくなるのが嫌で。でもそのせいで、64ページとかを、1日で撮るなんてまずあり得ないのに、3本ずつ撮るはめになりました。

梅津:普通は64ページ、どのぐらいかけて撮るんですか。

佐久間:1週間ぐらいかなあ?

岩井:この人たちはどうやって、3本分も、セリフを入れているんだろうと思いました。とくに若林さんなんて超多忙なスケジュールの中で。

佐久間:月に2日とか1日しかない、その休みを朝から晩まで撮影ですからね。

梅津:それでも若林さんご本人は、やりたいと言ってくださったんですか。

佐久間:はい。楽しかったみたいですよ。実際、「すごく楽しかった」って言っていた。

岩井:でも、若林さん、そこまで楽しそうに見えないんですよね。撮影現場でおしゃべりしているときはまだ楽しそうだけど、「ちょっとコーヒー買ってきます」とか言った時の、シャットアウトして歩いていく感じとかが(笑)。

佐久間:僕はもう付き合いが長いから大丈夫だけど、そうじゃない人には、「ダン、ガシャン!」って。変わらないんです。そしてそれを軽く飛び越えてきたのが佐藤さんです。

梅津:すごい、すごいですね。

佐久間:最初の収録の顔合わせのとき、若林くん、佐藤さんに「人見知りなんだって、でもそういうの関係ないから」と言われたらしいんです。

岩井:すごい。

梅津:姉御肌。

佐久間:若林くんもびっくりしていたけど、逆にありがたがっていました。そんな飛び越えてくる人もいないから。

岩井:「人見知りなんだって」がまずふつう言えないですからね。

佐久間:漫画のキャラクターみたいだね。

梅津:佐藤さんは、普段から、あのお姉ちゃんのような感じなんですか。

佐久間:そうです、そうです。結果的に一番役どころの性格に近かったのは佐藤さん。ただ、書かれている岩井さんご自身も、佐藤さんのキャラクターに多少引っ張られていったのではないでしょうか。

梅津:1日に64ページを撮る超過密スケジュールは、皆さんが忙しくて、やむを得ずだったんですよね。

佐久間:それはそうですね。3人のスケジュールが合うところが、本当になかったというのが一番の理由です。

梅津:私がびっくりしたのが、撮影した日からオンエアまでなんか1週間ぐらいしかなかったことです。えっ、ドラマってこんなにすぐにできるのかと。そんなものなんですか?

岩井:全然そんなことないです。3カ月前に全部撮り終わっているところもあります。

佐久間:企画が決まったのが急だったので仕方がなかったところもあるんですそれと、僕の手がける編集より、本作りとレシピの準備の方が大変だと判断したので、撮影日をちょっとギリギリにしたんです。

 

ツイッターに愛されたドラマ

梅津:7月の次が10月というのも、変則的なスケジュールでしたが、これは視聴者からのリクエストによるところが大きかったんですか?

佐久間:夏の1回目の放送の時に、びっくりするぐらいの数の「もう一回やってほしい」という数のメールが届きました。で、急きょ、10月にやることになって、さらに急なスケジュールで12月にDVD化が決まったんです。

梅津:ほかの番組と比べても、多い数のリクエストだったんですか。

佐久間:ああ、そうです、僕自身の経験の中でも多い方でした。すごい量だったなあ。

岩井:嬉しいですよね。

梅津:クレームは多そうだけど、支持する意見はなかなか届かなそうなのに、すごいですね。会社側が動いたのも、そのリクエストの力が大きかったんでしょうか。

佐久間:そうですね。もちろんでも、内容が面白いというのが、大前提だったようだけれど。DVDになったのも、どちらかというと、そういう感じですね。

梅津:DVD化も、視聴者発信だったんですか!

佐久間:DVDにしてくださいという意見は、たくさん頂きました。それと、僕がツイッターで、多少カットした所があることを言っていたので、それも全部ひっくるめて見たいっていう意見が結構寄せられたんです。

梅津:私が新しいと思ったのは、ツイッターで佐久間さんが、視聴者の方の声を聞いて、取り入れようとされていたこと。実名を出して顔出して発言をしている人って、ちょっと対応が大変になることもあるじゃないですか。でも佐久間さんは積極的に活用されているなと思ったんですよね。

佐久間:僕はツイッターで、高校生ともやり取りしています。「今日、バイトで嫌な事があったんですけど、ゴッドタンを見てたら元気が出ました。ありがとうございます」とかね。

岩井:うれしいですね、そんなの。

梅津:直接コミュニケーション取れますもんね。酒井さんもやっていましたよね、ツイッターでちょこちょこ、「終電ごはん」のことを言っていらっしゃいました。

佐久間:酒井さんは、上手にツイッターを使われてますよね。

梅津:そうですね。「酒とつまみと悪口と」でもありましたけど、一方で若林さんは匿名で誰にも見られない鍵付きで、こっそりツイッターやっているんですよね。

岩井:その話、本当に面白かったですね。実は「プロとは……」みたいな名言をつぶやいているという。

佐久間:そう、「いじられて怒るのは、そろそろ直さなければいけない」

岩井:名言っていうより、反省ですね。

梅津:佐藤さんはやってなさそうですよね。でもブログで「終電ごはん」のこと書いてくれていました。私、今回、お三方が、ラジオやツイッターで、「終電ごはん」のこと、すごく口にしてくれていたような気がしたんです。

佐久間:楽しんでいただけたんじゃないでしょうか。酒井さんと佐藤さんも思い入れがあるみたいです。酒井さんは、オードリーの単独ライブにもいらしていたそうですよ(笑)。

 

「続・終電ごはん」の可能性

岩井:もはやどこから話を始めていいのかが分からない(笑)。(※編集部注・以下ネタバレが含まれています。)なにせ、ワカナがヘルシンキに行っちゃうので。

梅津:そうですよね、ロケが大変になっちゃう。

岩井:だからヘルシンキ編とか。

佐久間:成田みたいな所から始めるしかない(笑)。

梅津:なんであんな無茶苦茶な設定にしたんですか?

岩井:僕も、「また見たい」と思わせるよう、寂しい思いをさせたろという思いがどこかにあったのかもしれない。そして、現場に見にいった時にちょうど撮っていた、そのシーンは忘れられないです。酒井さんの一撃必殺の演技はすごかった。寸前までフワフワなことばっかりあんなやっていたのに……。それを受けての若林さんもすっごく良かった。

佐久間:一発でパシッとね。あと、もっと衝撃的だったのは、佐藤仁美さん。若林くんの演技が終わった後に、「ちょっとなんか泣いていたじゃん。泣いてんじゃねえよ」とかって若林をいじってゲラゲラ笑っていたのに、直後に佐藤さんのワンショットを撮るときになって、「3、2、1」と言ったら、ポロッと涙を流しました。

梅津:すごいですね。

佐久間:バケモノだなと思いました。岩井さんと2人で目合わせちゃったんです。僕が撮っていて、岩井さんが後ろにいたんですけど。

梅津:なんか私、若林さんと酒井さんが結婚する前のお話が見たくなってきました。

結婚前、どうやって付き合ったのか、どういう女性だったのか、とか。

佐久間:すごいダッサいデートしてるとかね。

岩井:いいですね。よみうりランド行かせたい。せっかくゴーカートに乗ったのに、縦に並ぶしかなくて、全然レースができない、みたいな。

梅津:ダサいですね(笑)。でもそこにすぐ、よみうりランドが出てくるのはさすがですね。

岩井:それも実話なんです。そういうひどい経験が生きているんですね。

 

 

『終電ごはん』(書籍)

『終電ごはん〜お腹いっぱい完全版〜』(DVD)

 

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岩井秀人

1974年東京都生まれ。劇作家、演出家、俳優。2003年に劇団「ハイバイ」を旗揚げ。以後全作品の作・演出を担当。2012年、初めて手がけたテレビドラマであるNHKハイビジョン特集ドラマ『生むと生まれる それからのこと』で第30回向田邦子賞を受賞。2013年、『ある女』で第57回岸田國士戯曲賞受賞。ドラマ「終電ごはん」では脚本を担当。2014年7月にハイバイ「おとこたち」ツアーで東京、福岡、愛知へ。twitter:@iwaihideto

梅津有希子 編集者・ライター

編集者・ライター。1976年北海道生まれ。女性誌や単行本、Webなどで、料理、ペット、美容など幅広いジャンルの取材・執筆を手掛ける。著書に『終電ごはん』(幻冬舎)、『吾輩は看板猫である』(文藝春秋)など。吹奏楽漫画『青空エール』(作者/河原和音)の監修も務める。日頃からSNSやブログを積極的に利用し、フェリシモのセミナー「これからの発信の仕方」「SNSで世に出るゼミナール」では、「売り込む時代ではなく、目に留まる時代」をテーマに、多くの人の目に留まる発信の仕方を解説している。
公式サイト http://umetsuyukiko.com/

佐久間宣行

1975年福島県生まれ。テレビプロデューサー、演出家。早稲田大学卒業後、テレビ東京に入社。「ゴッドタン」「ピラメキーノ」「ウレロ!未確認少女」など、数多くのバラエティ番組の演出、プロデューサーとして活躍。2013年、『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』で映画監督デビュー。ドラマ「終電ごはん」ではプロデューサー、演出を担当。 twitter:@nobrock

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