わたしたちの「女性天皇」が日本を変える——。
天皇が切望し、国民が圧倒的(87% *2021年、共同通信の世論調査より)に支持する「女性天皇」を、政治家や有識者は黙殺し続けるのか。「皇室典範」のいびつなルールを死守し、皇統を途絶えさせるのか。新刊『「女性天皇」の成立』(高森明勅著)から試し読みをお届けします。
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見出しは次の通り。
「皇族女子 結婚後に特別職/『皇女』創設 政府検討」「皇室活動継続/女性宮家見送り」
中身の一部を紹介しよう。
「政府は、皇族減少に伴う公務の負担軽減策として、結婚後の皇族女子を特別職の国家公務員と位置づけ、皇室活動を継続してもらう制度を創設する検討に入った。『皇女』という新たな呼称を贈る案が有力視されている。皇族女子が結婚後も皇室にとどまる『女性宮家』の創設は見送る方向だ」
「政府は年内にも皇女の創設案を大島衆院議長に報告する方向で調整している」
政府が国会に約束したのは何だったか。繰り返すまでもあるまい。「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」「女性宮家の創設等」への検討だ。
「皇族減少に伴う公務の負担軽減策」など誰も求めていない。それなのに、結局「公の場で議論を行うための有識者懇談会も設けない」まま、皇位の安定継承という肝心のテーマは黙殺。女性宮家は「見送り」とは。国会の附帯決議を裏切るにもほどがある。
しかも、「皇女」プランなる劣悪な制度を新しく導入しようとしていることが判明した。政府は同プランで附帯決議への対応にスリ替えようと図っていたのだ。
ところがたまたま報道の翌日、私が同憂の人たちと以前から計画していたシンポジウムが開催された。「緊急シンポジウム 皇位の安定継承に向けて──もはや『先延ばし』は許されない!」だ。登壇者は、私以外は関東学院大学教授の君塚直隆氏、漫画家の小林よしのり氏、コラムニストの矢部万紀子氏など。会場は参院議員会館の大会議室だった。そのため、国会議員の方々にもご参加いただいた。さらに各メディアも取材に駆けつけてくれた。
私の「皇女」プランへの批判のポイントは至ってシンプルだ。
(1)同プランを採用しても、未婚の女性皇族(内親王・女王)がご結婚と共に皇族の身分を離れられることには変わりがない。だから、皇位の安定継承にはまったく寄与しない。
(2)皇族の身分を離れられた方々は、もはや国民の仲間入りをされる。そうであれば当然、憲法第三章が保障する「国民の権利」を欠けるところなく享受される。政府が新しく設けるという、「皇女」なる特別職の国家公務員への就任を拒否される“自由”も、お持ちでなければならない。従って、制度としてかなり不安定なものにならざるをえない。それを無理に安定化させようとすると、特定の「国民」にだけ自由を制限することになって、憲法違反をまぬがれない。
(3)特別職の国家公務員であっても、“特定の血筋”の人物しか就任できない公務員制度を新しく設けることは、憲法の“国民平等の原則”に違反し、第十四条が禁じる「門地(家柄)による差別」に当たる。
(4)「皇女」は天皇の直接の娘に当たる方に“だけ”使われる呼称で、皇族の女性の中でも特別の血縁を意味する。この語に当てはまるのは現在、敬宮(愛子内親王)殿下お一方だけ。その呼称を元皇族だった女性すべてに用いようとするのは、言葉の使い方として、無知をさらした恥ずべき誤用であるばかりでなく、本当の皇女でいらっしゃる敬宮殿下に対して非礼に当たる。実際は皇女ではない当事者の方々にとっても、おそらく不快だろう。およそ皇室の方々に対して最低限の敬意を抱いていれば、このような的外れなネーミングを思いつくことはなかったはずだ。
※この後、鋭く続く本文「政府の迷走ぶり」「有識者会議のヒアリングは妥当」……は、『「女性天皇」の成立』(高森明勅著)をお手にとってお楽しみください。
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