真夜中に目が覚めた。今、夜の二時四十一分。外は暗い。終電はとっくに過ぎた。人の声も無く、ただ秋の虫の声がする。満月が強いから起きてしまったのか? いや、眠れない夜にはいつだってちゃんと理由があるものだ。
引っ越しまで、あと一週間を切った。
段ボールに囲まれながら何か月かを過ごしたのに、準備の終わりがまだ見えない。物を捨てるのが苦手なわたしは、その取捨選択だけでほとほと疲れてしまった。しかもほとんど減っていない。運ばなければならないものの量を見て不安になる。本当にわたし、引っ越しを終えることができるのだろうか?
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
愛の病の記事をもっと読む
愛の病
恋愛小説の名手は、「日常」からどんな「物語」を見出すのか。まるで、一遍の小説を読んでいるかのような読後感を味わえる名エッセイです。