
生きるべき“座標軸”を示した奇跡のドラマ「北の国から」放送40周年記念。黒板五郎が過ごした20年の日々を、追体験する1冊となる、『『北の国から』黒板五郎の言葉』より、あの、名言の数々をご紹介します。
北の国から 第9回
東京から令子がやって来た。子どもたちに会うためだ。久しぶりで向き合う、五郎と 令子。
五郎「これまで──三か月──すこしずつできてきた──オレたちのここでの──暮らし方がな」
令子「───」
五郎「とくに純には──正直手をやいた」
令子「───」
五郎「なんど返そうと思ったかわからない」
令子「───」
五郎「それでもあいつは、すこしずつ変ってきた」
令子「───」
五郎「イヤ──変りかけているというべきなのかな」
令子「───」
五郎「あいつはいま強く──なろうとしかけてる」
(中略)
五郎「こういうふうに考えてくれないか」
令子「───」
五郎「君とオレがたとえどうなっても──子どもは子どもだ。二人の子どもだ。取りあげようなンてオレは思わない」
令子「───」
五郎「いずれ、あいつらがおとなになったら──イヤ──二年でもいい、一年でもいい ──時期がきたらあいつらに──自分の道は自分でえらばせたい。ただ──」
令子「───」
五郎「その前にオレは、あいつらにきちんと──こういう暮らし方も体験させたい」
令子「───」
五郎「東京とちがうここの暮らしをだ」
* * *
北の国から 第10回
杵次の娘で正吉(中沢佳仁)の母、みどり(林美智子)が現れた。
五郎「帰るンかい」
みどり「お店そうそう休めないしね」
五郎「うン」
みどり「こんど来たらよってよ、旭川。──サブロク街のポニーって飲屋」
五郎「(うなずき、正吉の頭なでる)さびしくなるな。家遊びに来い」
正吉、逃げるように木材のほうへ。
見送る二人。
みどり「また父ちゃんとやっちゃってね」
五郎「──(見る)」
みどり「来ると必ず帰るときけんか」
五郎「──原因は何だい」
みどり「馬(ちょっと笑う)」
五郎「馬?」
みどり「(うなずく)もう売ればっていったのよ。何の役にも立ってないンだし。かいば料だけで結構かかるし」
五郎「──―」
みどり「飼ってても死ぬの待つばかりなンだから」
五郎「何年いたの」
みどり「十八年かな。もう大オジン」
五郎「──―」
みどり「じいちゃんの気持ちもわかるンだけどね。家族同様の馬なンだから」