生きるべき“座標軸”を示した奇跡のドラマ「北の国から」放送40周年記念。黒板五郎が過ごした20年の日々を、追体験する1冊となる、『『北の国から』黒板五郎の言葉』より、あの、名言の数々をご紹介します。
北の国から 第11回
五郎は、純と雪子を救ってくれた杵次にお礼を言うために、笠松家を訪れる。
五郎「とってください。笑わないで」
酒とのし袋を杵次のほうへ押す。
杵次、じろっとのし袋を見る。
杵次「酒ァわかるが。──そっちのは何だ」
五郎「イヤもうほんの──とっつあんの馬に──えらい世話ンなったから」
五郎「かいば料です」
杵次「金か」
五郎「金ったってようオレ──。もともとないスから」
杵次「いくらはいってる」
五郎「ハイ。アノ──一万です」
杵次「一万?」
五郎「──(うなずく)」
杵次「ずい分安いンだな、お前の家族は」
杵次「二人の命が合わせて一万か」
五郎「イヤアノかえって」
杵次「金はいらねえ。持って帰れ!」
五郎「ハ。イヤ」
* * *
北の国から 第12回
3学期が始まった。教室では純と蛍が野生のキツネに餌を与えることの是非をめぐって正吉と言い争いになる。
ふん然と帰ってくる純と蛍。
純「おかしいよ! あの先生おかしいよ!」
五郎「(炉で大鍋をかけつつ)何がおかしいんだい」
蛍「キツネにえづけしちゃいけないって」
五郎「どうして」
純「要するにあれはひいきですよ。正吉の家からお歳暮に何かもらったンですよ」
蛍「(鍋の中を見て)何これ」
五郎「(笑う)牛乳」
蛍「牛乳?」
純「だって赤いじゃん!」
五郎「ああ、食紅をまぜられたンだ」
純「どうして!」
五郎「市場に出して売れないようにさ」
蛍「なあぜ?」
五郎「うンそれは──ちょっと説明がむずかしいな」
蛍「どうするのこれ」
五郎「バターをつくるンだよ」
二人「バター」
五郎「そうだよ。赤いバターだ」
純「変だよ! バターは黄色くなくちゃ」
五郎「そんなことないよ。赤くたってバターさ」