生きるべき“座標軸”を示した奇跡のドラマ「北の国から」放送40周年記念。黒板五郎が過ごした20年の日々を、追体験する1冊となる、『『北の国から』黒板五郎の言葉』より、あの、名言の数々をご紹介します。
北の国から 第13回
母・令子が入院したという知らせがあり、純と雪子は上京する。病状は芳しくない。 雪子は治療に疑問を持つが、令子は転院を拒む。純は以前の同級生たちに会うが話題についていけないことに落胆する。そんな純に、令子の恋人・吉野(伊丹十三)は「東 京で母と暮らせ」と言う。一方、富良野では中畑和夫と五郎が……。
和夫「おふくろさんに会って、しかも病気で。──とうぜんいて欲しいって懇願するンじゃないか?」
和夫「そンとき純坊につっぱね切れるか?」
五郎。
五郎「──―」
和夫「雪子ちゃんがいくらついてたからって、かんじんの純坊がその気になったら」 五郎「──―」
和夫「そういう可能性はじゅうぶんあるぞ」
五郎「──―」
和夫「もともとあの子は東京にいたいンだ」
五郎。
間。 薪をとって煙草に火をつける。
ちょっと笑う。
五郎「そのときは中ちゃん──。しかたないよそれは」
和夫「───」
五郎「そりゃあ──そのときは」
和夫「───」
五郎「(笑う)反対できないよ」
* * *
北の国から 第14回
令子の入院は続いている。このまま東京にいようかと考える純。ふと、東京で暮らしていた頃に五郎が起こした騒動を思い出す。拾ってきた自転車を修理して使おうとし て、巡査に自転車泥棒だと思われたのだ。そこには五郎の「モノと人の関係」をめぐる思いがあった。
五郎「(とつぜん)お巡りさん」
巡査「ハ?」
五郎「(興奮をけん命におさえる)オ、オレには────アレスヨ──、よく、わからんすよ」
巡査「何が?」
(中略)
五郎「だって──この、自転車は今は──こうやってきれいにしたけど──、見つけたときは──あすこのゴミの山に、雨ざらしになってもうサビついて」
令子「ちょっとあなた!」
五郎「あのゴミの山はその大沢さんの家のちょうどすぐ前にあるゴミの山だし、この自転車はそこにもうずっと一か月近くほうってあったわけで」
(中略)
令子「ちょっとあなた待ってよ!」
五郎「(興奮)おれは毎日それを見ていたスよ! オレが見てるンだから大沢さんだって毎日それを見てたはずだし、あすこは古いタタミとかテレビとか大きなゴミをためとく場所で、だから今さらあれは捨てたンじゃないあすこに置いてあったンだっていったって」
令子「(巡査に)すみません。(五郎に)ちょっと! もういいじゃない」
五郎「しかし──最近、東京では何でも──古くなると簡単に捨ててしまうから」
令子「(絶望)ねえ」
五郎「じゅうぶん使えるのに新しいものが出ると──、流行におくれると捨ててしまうから」
令子「やめて!! お願い!! 本当にもうやめて!!」