生きるべき“座標軸”を示した奇跡のドラマ「北の国から」放送40周年記念。黒板五郎が過ごした20年の日々を、追体験する1冊となる、『『北の国から』黒板五郎の言葉』より、あの、名言の数々をご紹介します。
北の国から 第22回
五郎「純」
純「──ハイ」
五郎「父さんの誕生日をやってくれるそうだな」
純「あああ! せっかく秘密にしといたのに」
五郎「こごみさんには、もう断わったか」
純。
蛍。 外からはいって来て立ちどまった雪子。
五郎「来ないでほしいと断わりに行ったか」
純「──イヤ。アノ」
五郎「純」
純「──ハイ」
五郎「来てほしくなければ断わればいい。父さん行って断わって来てやる。ただし」
純「───」
五郎「こごみさんが飲屋につとめてる人だからいやだという考えは父さん許さん」
純「───」
五郎「人にはそれぞれいろんな生き方がある。それぞれがそれぞれ一生けん命、生きるために必死に仕事をしている。人には上下の格なンてない。職業にも格なンてない。そういう考えは父さん許さん」
* * *
五郎はこごみの店を訪れ、誕生日の集まりがなくなったことを伝えた。こごみは自分も都合が悪くて断わるつもりだったと言う。
こごみ「人の噂って──五郎さん信じる人?」
五郎「いや」
間。 こごみ「じゃあ過去は?」
五郎「──―」
こごみ「過去にはこだわる?」
五郎「──―」
こごみ「許せないタチ?」
間。
ちょっと笑う。
五郎「いや、もうそういうのは卒業したな」
こごみ「───」
五郎「いや、してないかな」
こごみ「───」
五郎「どうかな。自分じゃ──。よくわかンないな」
こごみ「───」 演歌。
五郎「むかし──女房のあやまちを見ちゃって」
こごみ「───」
五郎「何度も何度も手をついてあやまるのを、どうしてもオレ許すことできなくて」
五郎「子どもたちまでまきぞえにして」
こごみ「───」
五郎「だけど最近ずっと思ってた」
こごみ「───」
五郎「人を許せないなンて傲慢だよな」
こごみ「───」 間。
五郎「おれらにそんな──権利なンてないよな」
五郎「女房──男といっしょになったって──妹ンとこに今日手紙来たンだ」
こごみ。 ──ゆっくり五郎を見る。 五郎、ちょっと笑う。
五郎「ホッとしてンだ」
こごみ「───」
五郎「卑怯かなオレ」