生きるべき“座標軸”を示した奇跡のドラマ「北の国から」放送40周年記念。黒板五郎が過ごした20年の日々を、追体験する1冊となる、『『北の国から』黒板五郎の言葉』より、あの、名言の数々をご紹介します。
北の国から 第23回
令子の死を聞いて、純と蛍は雪子と共に急遽上京した。一方、五郎が現れたのは葬儀 当日の朝だった。しかも翌日には富良野に戻ると言う。夜、五郎は令子の部屋にいる 蛍を見かけた。
蛍「父さんおぼえてる?」
五郎「──―何」
蛍「こわかった夜のこと」
五郎「こわかった夜のこと?」
蛍「父さんが──急に早く帰って来て、母さんおどかそうって美容院に行った日」
情事の現場からふりむいた令子。
五郎「蛍はまだそんなことおぼえてたのか」
蛍「思い出そうと思ってただけ」
五郎「なぜ思い出す」
蛍「──いやだったから」
五郎「どうしていやなこと思い出す」
蛍「いいことばかり思い出しちゃうから」
五郎「──―」
蛍「いいこと思い出すとつらくなるから」
五郎「蛍」
蛍「───」
五郎「母さんもう死んじゃったンだ」
蛍「───」
五郎「母さんのやなことは全部許してやれ」
五郎「むかしのことなンかもう忘れろ」
蛍「父さんは?」
五郎「父さんか」
蛍「───」
五郎「父さんは──とっくに許してた」
蛍「───」
五郎「ぎゃくに父さんが──」
蛍「───」
五郎「許してほしかった」
深夜、ふと目を覚ました純が見たのは、母の遺骨を前に一人で泣いている父の姿だった。
* * *
北の国から 第24回
純は東京にいる間にかつての先生や友達に会った。だが以前のような彼らへの憧れも、 気おくれも感じないことに気づく。北海道での1年が純を変えていたのだ。子どもた ちが富良野に戻った夜、五郎は2人を最初に住んだ家に連れて行く。
五郎「捨てたら何だかなつかしいもンだな」
五郎「ここで一年、がんばったンだもンな」
純「───」
五郎「純」
純「───」
五郎「まいってるか」
純「(小さく)だいじょうぶです」
五郎「そうか」
純「───」
五郎「強いな」
純「───」
五郎「父さんはまいってる」
純。 ──父を見る。 すぐ目をそらす。
五郎「男が弱音をな──」
純「───」
五郎「はくもンじゃないがな」
純「───」
五郎「しかしな──」
純「───」
五郎「まいってる」
純「───」
五郎「いまだけだ」
純「───」
五郎「許せ」
五郎「つらいなァ」
純「───」
五郎「え? 純」
純「───」
五郎「(かすれる)つらいなァ」