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東大教授が考えるあたらしい教養

2021.12.02 公開 ポスト

ビジネスで真に必要な「コミュ力」とは異分野の人と議論する力藤垣裕子/柳川範之

かつて、「教養=知識量」だった時代がありました。しかし、ネットで検索すればあらゆる情報が手に入る今、その公式は崩れ去っています。では、現在における真の教養とはなんなのか? それを身につけるにはどうすればよいのか? 二人の東大教授が贈る『東大教授が考えるあたらしい教養』には、その要諦が詰まっています。仕事や人間関係にも必ず役立つ「あたらしい教養」を、ぜひ本書で身につけてください!

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専門性だけ高い人は生き残れない

みなさんは「ビジネスパーソンとして長く活躍したい」と考えたとき、求められる能力はどのようなものだと考えているでしょうか。

(写真:iStock.com/metamorworks)

「やはり何か専門的な知識がなければ」と考え、たとえば資格取得を目指す人もいるかもしれません。あるいは、AI(人工知能)により「生き残る職種、消える職種」があるといわれる中、生き残れる職種を探そうと考える人もいるでしょう。

しかし、現代は「専門知識があれば安心」「この職種なら安泰」とはいいにくい時代です。情報技術の進展などによりビジネスの環境が大きく変化する中、ビジネスパーソンに求められる能力についても、新たな課題の解決やこれまでにないアイデアの発想などの比重が高まっているからです。

 

ビジネスの場面において「課題解決」「アイデア発想」のために必要なのは、「異分野に視線を向ける力」と「異分野とコミュニケーションする力」です。これらは、今までの章で述べてきた、「自分と違う他者と連携する」という真の教養をより具体化したものといえます。

これからのビジネスに求められる力

本業の知識とはまったく別のところから思わぬヒントを得たり、アイデアを思いついたりするのは、世の中に多々あることです。それが思いがけない出会いから生じる場合もあります。

ですから自分から意図的にさまざまな分野に関心を持ち、そこからヒントを得て解決策に結びつけていく姿勢を持つことが大切です。これが、「異分野に視線を向ける力」です。

(写真:iStock.com/tadamichi)

ただし、単に視線を向けたり、意識をしたりするだけでは前に進めない場合もあります。たとえば、より積極的に新たなビジネスの機会を探ろうとすれば、従来とは異なる産業分野に進出したり、異業種と協業したりする必要性が増えてきます。

すると当然、これまではまったく関わり合いのなかった分野の人と会話し、議論する必要性に迫られることになります。

そこで求められるのが「異分野とコミュニケーションする力」です。

 

わかりやすい例を挙げると、初期の携帯電話の頃まで、情報通信企業が扱うのはほとんど音声通話のみでした。しかし情報通信技術の発達により電話回線上にさまざまな情報が流せるようになったことで環境は激変し、テレビなどの放送業界やゲーム、音楽などのコンテンツ産業との結びつきが深まっています。

情報通信企業で働く人は否応なく、ゲームを作る人、動画を作る人、あるいはユーチューバーのような人と会話し、議論し、ビジネスを進めていく必要性が生じてきているわけです。

社会が大きく変化する中、業種や業界が異なる人と会話し、建設的な議論を行って成果を生み出す力はますます求められるようになっています。

「私はコンテンツ作りが仕事なので、もの作りのことはわかりません」

「IT業界で働いているので、外食サービス業界には興味がありません」

こういったスタンスでは、ビジネスの活動範囲はなかなか広がっていきません。生き残っていくことすら難しい場合も出てくる可能性があります。

 

それとは逆に、「異分野とコミュニケーションする力」を持っている人は、会社の中でもチャンスが与えられやすく、実際に新たな課題に取り組んだときに成果を上げられる可能性も高くなるでしょう。

世間一般でも「コミュニケーション能力が必要」ということはよくいわれます。けれども、その意味はあいまいです。「誰とでも楽しく会話できる」「気遣いができる」といったイメージを持っている人が多いかもしれません。

しかし、よりよい成果を生むという観点でいえば、ビジネスパーソンに求められるコミュニケーション力は、「異分野と」という点こそ強調されるべきではないかと思います。

 

異分野の人同士でそれぞれの知見を生かし、相互の違いをふまえて議論し、アイデアを発展させていくことこそ、ビジネスに求められる真のコミュニケーション力であり、それはまさに本書が繰り返し述べている「教養」にほかならないのです。

関連書籍

藤垣裕子/柳川範之『東大教授が考えるあたらしい教養』

「教養=知識量」という考え方はもう通用しない。ネットで検索すればあらゆる情報が瞬時に手に入る今、知識量の重要性は相対的に低くなっているからだ。東大教授2人が提唱する教養とは「正解のない問いに対し、意見の異なる他者との議論を通して思考を柔軟にし、〈自分がよりよいと考える答え〉にたどり着くこと」。その意味するところは何なのか? どうすればこの思考習慣が身につくのか? 人工知能の発展が著しい現代だからこそ、人間にしかできない能力を磨く必要がある。その要諦が詰まった一冊。

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東大教授が考えるあたらしい教養

かつて、「教養=知識量」だった時代がありました。しかし、ネットで検索すればあらゆる情報が手に入る今、その公式は崩れ去っています。では、現在における真の教養とはなんなのか? それを身につけるにはどうすればよいのか? 二人の東大教授が贈る『東大教授が考えるあたらしい教養』には、その要諦が詰まっています。仕事や人間関係にも必ず役立つ「あたらしい教養」を、ぜひ本書で身につけてください!

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藤垣裕子

一九六二年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。一九八五年、東京大学教養学部基礎科学科第二卒業。一九九〇年、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。一九九〇年、東京大学教養学部助手。一九九六年、科学技術庁科学技術政策研究所主任研究官。二〇〇〇年、東京大学大学院総合文化研究科広域システム科学系助教授。二〇一〇年、同教授、二〇一三年、東京大学総長補佐。二〇一五年より東京大学大学院総合文化研究科副研究科長・教養学部副学部長。学術博士。

柳川範之

一九六三年生まれ。東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。中学卒業後、父親の海外転勤にともないブラジルへ。ブラジルでは高校に行かずに独学生活を送る。大検を受け慶應義塾大学経済学部通信教育課程へ入学。大学時代はシンガポールで通信教育を受けながら独学生活を続ける。大学を卒業後、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。『法と企業行動の経済分析』(第五十回日経・経済図書文化賞受賞、日本経済新聞社)、『東大教授が教える独学勉強法』(草思社)など著書多数。

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