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政治を語ろう

2021.11.19 公開 ポスト

弱音を吐くことから始める社会と政治を変える一歩平河エリ

選挙前の本特集で、選挙が「どのような結果になっても、それを民意の結果として受け止め、尊重することが重要」と書かれたポリティカル・ライターの平河エリさん。実際、今回の結果をどのように受け止められたのでしょうか? 日常のなかでの一市民の政治への態度について、あらためてご寄稿いただきました。

(写真:iStock.com/Prostock-Studio)
 

困りごとは自分のせいだと思わず、社会の課題だと思うこと

2021年の衆議院選挙が終わり、全議席が確定しました。

紋切り型で言うならば、この選挙は「自民党が堅調に議席を確保し、維新の会が躍進し、立憲民主党が敗北した」などと始めるべきなのでしょうが、今回は政党という観点での切り口では語りません。

前回の記事において、私は、「もし投票先が決まらないのであれば」、「若い人」「女性」「世襲ではない人」に投票することを提案しました。
今回の選挙の結果はどうだったでしょうか。
平均年齢は54.7歳(2017年当選時)から55.5歳に上昇し。女性議員の比率は10.1%から9.7%に減少。世襲議員は109人(時事通信)から116人(毎日新聞)へと増加しました。
一言で言うならば、若い人が減り、女性が減り、世襲議員が増えたのが今回の選挙であった、と言えるでしょう。

結果だけを見れば、私個人が書いた、この国が目指すべきと考えている変化の方向と違う結果になったことは事実です。個々の議員の当落は別にして、私は議会に多様性と、より若い人間の視点と、政治家の血縁でなくても挑戦できる幅の広さを求めています。
しかし、日本人の民意は、より男性を、より世襲議員を、より経験ある議員を、選んだということになるでしょう。

選挙結果に対する感想や想いは人それぞれだと思います。
応援している候補者が当選された方も(おめでとうございます)、落選された方も(お疲れさまです)、支持政党にとって思った通りの結果だった方も、そうでなかった方もいらっしゃるでしょう。

ただ、どの政党が勝ったかということは、副次的な話に過ぎません。
政府与党は高齢男性の現職議員が多く、野党には若い候補者や、女性候補者が比較的多いとは言えますが、それはあくまで個々の議員の当落の上に成り立つ数字です。
どの政党の支持者であっても、今とは違う議会の形、より多様性に溢れた議会の形を求めている方はいると私は信じています。

そして、そのように議会の変化、とりわけ女性議員を応援し、女性議員比率の上昇を願っていた方の中には無力感を感じたり、自暴自棄になっている方もいらっしゃると思います。10%台ですら少ないのに、そこから更に減少するのか、と驚く人も少なく有りません。

また、選択的夫婦別姓や同性婚など、いわゆるジェンダー政策が今回一定の論点として取り上げられ、メディアでは議論されたにもかかわらず、それが投票行動に全く影響していない(あるいは、ジェンダー政策に積極的な政党にとっては、むしろ負の影響があるとすら言える)結果になったことに対して、落ち込んでいる人もいるでしょう。
これらの政策はまさにアイデンティティに関わる問題であり、かつ、法律が施行されればさほどの予算もいらず、当事者にとっては大きな力になるはずのものです。にもかかわらず、遅々としてその法案は国会で審議されないのです。

先述したとおり、私にとっても、上記に述べた「若い人が減り、女性が減り、世襲議員が増えた」という結果は望ましいものではありませんでした。他方、この選挙結果を見たとき、憲法12条の条文を改めて思い出さざるを得なかったのです。

憲法12条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

つまり、選挙というのは、「普段(不断)の努力」の結果として現れるものであり、選挙の期間だけ仰々しく語っても、それはあくまで限定的な効果しかもたらさない、ということです。

他国を見れば、政治が社会の変革を先導しているケースが多く見られます。政治は社会の一歩先を進み、そこから社会が変わっていきます。
日本は逆です。残念ながら、政治は民間の一歩後を歩いているのが実情です。

日本の民間企業(とりわけ上場企業)はこの数年で大きく変わりました。まだまだグローバルスタンダードに追いついているとは言えませんが、それでも女性管理職上昇などについて、積極的に取り組む企業が増えたことは事実です。
他方、政治業界はどうでしょうか。私は断言しますが、日本において、これほどまでに閉鎖的で、女性が少なく、新陳代謝が進まない業界は、他にありません。

それはすなわち、社会の変化に合わせて政治が変わっていく可能性を秘めている、ということでもあります。
政治が我々を先導するのではなく、我々が政治を先導していかなければいけない。選挙で社会を変えるのではなく、社会が変わった時に初めて、選挙で政治を変えるチャンスを得るのではないでしょうか。

この選挙結果は改めて、日本政治の遅れを明らかにしたと私は感じています。これは何も、選挙結果のことだけを言っているのではありません。
オンライン化できず、変化のない国会、何十年も棚晒しになっている法律、パンデミックに対する政府対応のまずさなど、日本の立法、行政機能は、世界の最後列を歩いています。政治業界の自助努力でこれを変えることは出来ません。つまり、政治家だけでは政治を変えることは出来ないのです。

選挙で社会を変えるのではなく、変わった社会が議員を選ぶ。それが明らかになったのが今回の選挙ではないでしょうか。しかし、選挙は無駄では有りません。この選挙でも議論された様々な問題は萌芽となり、様々な場所で議論され、そしてそれがいつかどこかで芽吹くでしょう。
もし選挙結果に納得がいかない人がいるならば、社会を変えるチャンスはすでに始まっています。身近なところに小さな変化を及ぼしていきましょう。

身の回りで政治の話をしてみること。選挙(選挙は国政選挙だけではなく、地方選挙は毎週どこかで行われます)を少しだけ手伝ってみること。政治家に話しかけてみること

あるいは、困りごとがあったら自分のせいだと思わず、社会の課題だと思うこと。辛いことがあったら周りに弱音を吐いてみること。社会を頼ってみること

大きなチャレンジでなくてもいいのです。世界は変わらなくても、あなたの周りは少し変わります。すべてを自分で引き受けず、社会を巻き込んでいくだけで、それは社会を変える一歩を踏み出したと言えるのです。

「不断(普段)の努力」こそが明日を変える力を持っている。私はそう信じています。
選挙がどんな結果でも、明日は必ずやってきます。しっかり眠って、そしてまた朝日を迎えましょう。

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政治を語ろう

10.31衆院選。選挙に向けても選挙後も、みんなで気軽に政治を語ろう。

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平河エリ

 

ポリティカル・ライター。京都市生まれ。早稲田大学卒。ライターとして各種媒体で執筆する他、ネット番組などにも出演。専門分野は議会政治と選挙。著書に「25歳からの国会 武器としての議会政治入門(現代書館)」他1冊。

 

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