衆議院議員総選における20代の投票率は30%代を推移しており、「投票に行かない若者たち」が度々論点となってきました。しかし、早稲田で油そばの専門店を開いているチン正男さんは「若者は投票しないのがデフォです」と言い切ります。成績不振の学生に「無限ライス(ご飯お代わり自由)」を提供し授業参加を促したり、選挙の投票済証を持参した学生には「チャーシュー増量無料」サービスをしたりと日々ユニークな試みを展開しているチンさんに、若者と選挙についてお考えを伺いました。
みなさん。こんにちわ。チン正男と申します。
この度の寄稿は誠に場違いなんじゃねえかなと思うのですが、当方「武蔵野アブラ學会」という都内に存在する油そば屋のゆるふわ系マスコットキャラクターです。こんな奴を誉れ高き幻冬舎プラスさんの「政治を語ろう」に登場させてどうするつもりなんだよ⁈ と思うのですけど……。まあ。ほら。多種多様な意見って大事じゃないですか。私普段は油に塗れている市井のおっさんなんですけど、せっかくなので有象無象なる「下級国民」の一人として政治を弾き語っていこうかと思う次第です。
第49回衆議院選挙。どうでした? 皆さん。盛り上がってました?
コロナ禍で多くの人々の生活に深く影響を与えている中でのビックタイトルな国政選挙なので関心高くなるのかと思いきや、蓋を開けると戦後3番目にイマイチな投票率(55.93%)でした。選挙それ自体よりTBS選挙特番でMCを務められた太田光さんのアレが無礼だ! と燃え上がり、夫を守ろうと出てきた光代さんにも飛び火して太田城が何故か焼き討ちに遭うという事件の方がむしろ盛り上がったんじゃねえのかというくらいには薄かった。うん。
かような選挙でしたが、私めは早稲田の商店会(早稲田商店会・大隈通り商店会)を巻き込んで「いいからその一票投じて貰えるもん貰っておけよ!」というコンセプトの下に「投票率爆上げ大作戦! 行け! 総選挙セール!」というのを催してました。期間中に投票済証を持ってきたお客さんを参加商店が割引やサービスで至れり尽くせり歓待するというものです。私の店を含め主旨に賛同された近隣19店舗ほどが参加され、高田馬場経済新聞でも取り上げて頂きました。
なぜ若者は投票しないのか
それにしても特に最近つと目に付くのが「若者の投票率の低さとそれを嘆くメディアの論調」であります。
しかしですの。さも最近の若者は……みたいに言いますけど、そんなもん私が若かった20年前にも言われていましたって! と思う次第です。強いていうなら平成この方ずっとそう。若者はそもそも投票しねぇよ。
各国政選挙の年代別投票率の推移眺めてみても平成に入ると20代の投票率は急降下していき、たまに訪れる政権交代機運や郵政選挙のような面白ビッグイシュー以外は概ね20代は30パー代で推移。特に参院選は定期的に3年ごとに催されるので争点も起こりにくく安定の低投票率です。ちなみに我らが40代後半から50代が若かりし頃の平成7年参院選において史上最低の25.15% という誇るべき大記録を打ち立ててる。
この方30年間「若者は投票しない」のがデフォです。
今更嘆くことなのかよ。メディアの衆よ……。
なぜ若者は投票しないのか。
至極理由は簡単で、若い人は特に政治を必要としていないから。
必要性を感じないから投票しない。そんなことより家でポテチでも頬張っている方が遥かに重要だからです。
もちろん若くても政治に関心を持ち投票に行かれることは素晴らしいのですが、多くが来たるべき投票日を鼻くそ丸めてお過ごしになられたところで悪いわけではありません。
政治って他力本願なんですよね。「政治」って文字みてもいまいちピンとこないけど、要は自分ではどうにもならんことを社会に解決を委ねる行為に近い。
若ければ自分でなんとかなる事が多い。仕事が嫌なら辞めても次を見つけるのにさほど苦労しないし、体力もあるからいくらでも頑張りは効くし、変な持病持ちとかほとんどいないし。老後の心配なんかしている奴なんてまずいない。
自力でなんとかなる、やり直しも効くし学び直してスキル上げて活かすだけまだ人生に時間が残されている。
若ければ社会の保護が多少足らなかろうがドンと来い! なのだ。死ぬ事以外はかすり傷。
20代の投票率が高くなる時
でもおっさん、オバハン、ジジイババアはそうはいかんのですよ。
失政でもされて不景気にでもなったら仕事をお払い箱にされかねない。無職のおっさんの悲劇なること。無能なオッサンだとどこにも相手にされない。子供がいれば子供背負って生活せにゃならん。保育に学童、社会支援なしには乗り切れない。中年になると身体も不調を起こし医療制度の有り難みを知る。思うように増えない収入に反して増える税金・社会保険料に頭を悩ます。次第に年金とか老後の2000マン問題とかが現実味を帯び始める。
要は自分ではどうにもならんことが増える。50歳すぎてプログラミング学ぼうとしても活かせる術はない。一念発起しても大谷翔平にはもはやなれない。人生軌道修正もう時間切れ。かすり傷ひとつで致命傷。あとは慣性の法則で残りの人生をいかに終えるかが勝負です。ゴール前に倒木とかあったら困るわけですよ。
だから社会が自分により望ましくあって欲しいと思うようになる。
自分はもはや変われないが、社会に変わって欲しいと願う。それは政治への関心につながります。
だもんで。若者の投票率低いのは自ずとそうなるはずで嘆くことでも無いです。
むしろ20代の投票率が高くなるという事はそれだけ若さでも解決できない問題が多い社会ということになるとは思う。
若者が政治に積極な関与を求めるような状態って、グンマー国の密林に足を踏み入れると生きて還って来れないとか、毎年秋にはサイタマ族が池袋を包囲略奪しにくるレベルのディストピアな世界なんじゃないのか。街中にヒャッハー! とか言ってモヒカンが跋扈するくらいの。
投票所は神社、投開票日は縁日開催
それでもやはり若者には投票しておいた方がいいよと伝えていきたい。
なぜなら、参加しないとおっさんオバハンジジイババアで物事決めていくことになるからです。
当然若者のことなんかどーでもええわってなる。こやつらにはしっかりワシらの世話させてやらんとのぅ! お前らが支払う年金は5倍な! そんでもってワシらはしっかり5倍いただくわ! って決めていきかねない。立派なおっさん世代であるこの私もそうしたいです。後のことは知らんから、俺が棺桶に入るまで国のリソースはワシらの為だけに費やしておくれ。
若い世代が多ければ多少投票率低くても数の力でなんとかなるかもですが、残念ながら数は若い世代ほど少ない。なので、無理してでも投票させないとますます下の世代に冷たい社会になってしまう。20代30代の投票率が99.99%とかどこぞの独裁国家かよ!? ︎みたいな投票でもないとこの流れに太刀打ちできないだろう。
果たしてそれでいいんだろうか?
私個人はそれがいいと思うが、多分私の邪な考えは正しく無いだろう。
そのような想いにより若年層の投票率を純金の含有率位にまで高めんと冒頭の方で申し上げた「総選挙セール」を開催してました。実施した商店会は早稲田大学のお膝元。若者が多く集う地域でこそ必要な施策だろうと。
私の店のセール内容は「チャーシュー増量(220円相当)無料」。目の前に肉をぶら下げてとりわけ若者を投票所まで歩かせようという魂胆です。セール期間中肉に誘き寄せられて当店に投票済証を持ってきた若人は80名ほどにあがり、商店会全体の分も考えると「よしよし。これで10代20代の投票率は20000%くらいになったかな」とほくそ笑んでいたのですが、ご多聞に漏れずこの度の投票率を見る限り、焼石に霧吹きくらいのもんだったのかもなと痛感してます。うん。なかなかに難しい。
いっそ投票所を神社とかにして、投開票日には境内で縁日が開かれて、みんなお祭り気分で投票をするとかした方がええんじゃないすかね。めんどくさいし関係ねぇと思っている方々も楽しそうなイベントならホイホイ馳せ参じるんではないでしょうか。
たこ焼き頬張りながら賽銭箱に一票投じて、シャンシャン鈴鳴らしてついでにおみくじでも引いて金魚釣って帰るんですよ。投開票日は人が集まるから露天商もいい商売になるし。景気も良うなる。知らんけど。