朝井リョウさん『どうしても生きてる』の文庫が発売となりました!
単行本から装い新たに、文庫カバーは生まれたばかりの蝶が目印です。
解説をご執筆くださったのは、万城目学さん!
特別に一部をご紹介いたします。
ともに目にしている「今」の世界は同じでも、小説へのアプローチは、私と朝井氏とではまったくと言っていいほど違う。
私は徹頭徹尾、「虚」の作家だ。
先に紹介した、山田風太郎『八犬伝』のなかでの馬琴のセリフ、
「ツジツマの合わん浮世だからこそ、ツジツマの合う世界を見せてやるのだ」
は私の主張をおよそ網羅している。
一方、朝井氏はときに「虚」の物語も織りこみつつ、「実」の世界を、底へ、さらに底へとひとり掘り続けている。穴のへりからのぞきこんだとき、もはやその頭がわずかに確認できるか否かくらいまで暗闇に浸りながら、さらに沈降せんと決意しているように映る。
朝井さんが描く「実」の世界とはいかなるものか――。
底へ掘り続けた先で、朝井さんが見つけたものは――。
最後に見つかる光を、ぜひ書店でお手にとって確かめてみてください!