「人生100年時代」を迎えている今、「生涯現役」を目指すシニアが増えています。しかし、「生涯現役」なのは仕事だけではないようです。恋愛も、結婚も、セックスも、死ぬまで現役でありたい……そう望むシニアが増えた結果、シニアの恋愛トラブルもまた増えているそうです。弁護士で民事解決のエキスパートである西本邦男さんの著書『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?』より、実際にあったトラブルと、その解決法をご紹介します。
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【質問】もともとの子供たちとの関係
「年の差婚」では、当事者同士は盛り上がっているのに、その周囲の人間たち、特に高齢者である父親が「年の差婚」の当事者になったときの子供たちの戸惑いと、悩みは深いと聞きました。そのことが親子断絶や家族崩壊、ひいては遺産相続のトラブルになっては「年の差婚」の喜びどころではないと思います。
「年の差婚」の際の子供たちとの良好な関係の保ち方は、どう考えておけばいいのでしょうか。
【困った状況の例】子供たちが父の「若い妻」を認めない
お母さんが亡くなって10年、お父さんが子供たちより若い人と再婚したのだけれど亡くなった母の気持ちをおもんぱかってか、子供たちが再婚相手を受け入れないケースがありました。
当事者のAさんは、大手企業のエンジニアだったのですが、40歳で独立し、町工場を立ち上げ、成功した人。長男は大学卒業後、父親の片腕となって働きました。
ところがAさんが65歳の頃に奥さんが亡くなり、それから2~3年して30歳年下の女性と再婚したのです。その時点では、子供たちはみな40歳を超え独立して家庭を持っていました。
父と同じ会社で働き、自宅にも行き来する長男は、表面は仲良く若い“母”とも付き合いましたが、いつしか父夫婦との交流はなくなり、会社でも父親や古くからの社員とは距離を置くようになりました。
そうして、Aさんは、やむを得ず長男が会社を設立し、独立するのを認めました。さらにAさんは、息子の行動は自分の「年の差婚」再婚が原因かと思い、長男の会社に何かと援助しましたが、いつしか長男の会社はうまくいかなくなり、つぶれてしまいました。
定職にも就けなくなった長男は、姉に借金をするようになり、姉は弟を不憫に思い援助をしましたが、弟は立ち直ろうとする気力を持てず、姉への無心を続けたのです。しかし、父には一切援助を求めませんでした。
【答えは、こうなりました】遺言書の効果
Aさんは、死の間際、弁護士を呼び、遺言書の作成を依頼しました。遺産分割にあたり、子供らの「遺留分」を侵害しない範囲で妻がすべてを相続することとし、そして思い出となる書画骨董などの動産の配分を妻に委ねました。
そしてAさんが亡くなったとき、若い妻は彼女なりに配慮して、自分に配分を委ねられた遺産としての動産の中から、長男に「望むものをとるよう」に求めたのです。でも、望むものを聞かれた長男は、値の張る物が多数ある中、生活に困っているにもかかわらず、父親と一緒に作った思い出の機関車の模型を求めただけで、それ以外を望みませんでした。
Aさんにしろ、若い妻にしろ、また長男にしろ、それぞれに気持ちの現われた対処の仕方だったと思いますが、これも「年の差婚」がもたらした、ひとつの家族模様であったわけです。
ただ、Aさんが遺産相続に関しては、きちんと遺言書を弁護士とともに作成していたことで、いわゆる「泥沼の遺産争い」にならずにすんだ、とはいえると思います。
枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?高齢者恋愛トラブル相談室
「人生100年時代」を迎えている今、「生涯現役」を目指すシニアが増えています。しかし、「生涯現役」なのは仕事だけではないようです。恋愛も、結婚も、セックスも、死ぬまで現役でありたい……そう望むシニアが増えた結果、シニアの恋愛トラブルもまた増えているそうです。弁護士で民事解決のエキスパートである西本邦男さんの著書『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?』より、実際にあったトラブルと、その解決法をご紹介します。