「人生100年時代」を迎えている今、「生涯現役」を目指すシニアが増えています。しかし、「生涯現役」なのは仕事だけではないようです。恋愛も、結婚も、セックスも、死ぬまで現役でありたい……そう望むシニアが増えた結果、シニアの恋愛トラブルもまた増えているそうです。弁護士で民事解決のエキスパートである西本邦男さんの著書『枯れ木に花が咲いたら、迷惑ですか?』より、実際にあったトラブルと、その解決法をご紹介します。
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【困った状況】ヘルパーさんたちへの狼藉
では、この老人施設の中で、週刊現代から「元気すぎる」と指摘されている「老人」たちの行為、介護福祉士さんたちに対する狼藉とは、一体何なのでしょうか。
週刊現代が、本文の小見出しに「大きくなっちゃったよ」とか「性欲の処理を手伝えと」とか、「いくらでも払うから」といった文言を使うような「振る舞い」は、法律的にはどういうことになるのか検討しましょう。
当該の記事を、もう少し詳しく見てみます。
本文では、「要介護者の男性からキスを迫られたり、胸を触られたり、お尻を撫でられたりといったことは日常茶飯事です」という女性介護福祉士や、男性高齢者の入浴介助をしている間にいきなりTシャツの中に手を入れられ、胸をもまれてしまった、という女性ホームヘルパーの声を伝えています。
また、入浴介助のときに「ここも洗ってくれ」と局部を洗うよう求められたり、「毎朝(勃起して)あそこが痛い。何とかしてくれ」とその「処理」を求められたり、本当にレイプされるのではないかと恐怖感を持ったといった女性介護福祉士、ヘルパーさんの苦労、苦難も赤裸々にレポートされています。
【答えは、こうなります】それは「犯罪」です
レポートにあるような「介護の現場」での出来事の多くは、介護福祉士さんたちの、その道の「プロ」としての機転や適切な対応で、何とか事なきを得ているのでしょう。
しかし、ここにあげられているような行為を、もし強制的に行ったとしたら、一般世間と同様、脅迫罪や傷害罪といった刑事事件に該当するでしょうし、あるいはストレートに強姦罪とか強制わいせつ罪といった「性犯罪」行為を構成することもあるでしょう。
また、当然、民事上の損害賠償の問題も生じます。
【困った状況】世代的な問題も
私は先に、セクハラというのは職場での上下関係といった「力」を利用して行われる相手方の望まない性的行為といいました。そこで、そういう「力関係」ということから、介護を受ける者と介護をする者の関係を見てみると、どうでしょう。
普通に考えれば、介護を受ける高齢者は「お世話になりますねえ。よろしくお願いしますよ」という感覚になるだろうと思います。でも、現実は、面倒をみてもらっている人間が、面倒をみてくれている人に「わいせつ行為」をする。これをどうとらえればいいのでしょうか。
介護サービスを受ける者は、少なくとも何らかの形でサービスの「対価」は払っています。ですから、「元気のいい老人」であれば、「オレたちは金を払っているんだから、客だぞ」と、力関係が逆転する場合もあるかもしれません。
確かに、そういう高齢者もいると思います。そして、そういう人は「金を払っているのに、お尻を触ったぐらいで何だよ!」と居直るでしょう。
しかし、大方、そういうときは、はっきりと、「それは、犯罪ですよ」と言えばいいのです。
むしろ、そういうおじいさんには「それは、犯罪なんだよ」と言ってあげなければなりません。そこは、明確な線引をしておかなければならないと思います。
これは、悲しいことかもしれませんが、歴史的に女性に対するそういう意識がぬぐえない世代があったり、あるいは赤線などが存在した時代の経験、戦争の体験などで、どうしても女性に対する性的行為を軽く考えてしまう世代も、まだ存在するのです。
【答えは、こうなっています】犯罪は犯罪です
ことばによる「侮辱」や「名誉毀損」、またストーカー行為、さらには酒食の席で抱きつく、尻を触るなどの行為、これらをまるで犯罪だと思っていない人もまだいますが、はっきりと「刑法に書かれた犯罪なのだ」と教えてやらなければならないと思います。
介護福祉士は女性が多く、ホームヘルパーは8割以上が女性。そして、彼女たちが40代、50代であっても、70代以上のおじいさんたちにとっては「若い娘」。性欲を刺激されて「元気すぎる老人」になっても不自然ではない、ともいえる。このように、週刊現代は書いていますが、たとえ、恋愛感情や性欲が刺激されたとしても、犯罪行為は犯罪行為なのです。
高齢者であろうが、介護を受けている人であろうが、関係なく、犯罪は犯罪。そこだけはきちんとしておかなくてはなりません。このことはきわめて大事なことです。
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