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宇宙はなぜ美しいのか

2022.01.03 公開 ポスト

私たちの銀河系がアンドロメダ銀河と衝突!そのとき何が?村山斉

銀河は衝突・合体によって若返り、新たな星が生まれます。私たちの太陽系が属する銀河系(天の川銀河)も、いずれアンドロメダ銀河と衝突すると予測されています。そのとき一体何が起こるのでしょうか。「美しさ」をキーワードに最新の研究成果をやさしく解説した『宇宙はなぜ美しいのか 究極の「宇宙の法則」を目指して』(村山斉著)から抜粋してお届けします(記事の最後に、村山斉さんの講演会のお知らせがあります)。

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40億年長生きすれば見られる大スペクタクル

そして、銀河の衝突・合体は私たちの銀河系にもいずれ起こると予想されています。合体の相手は、もちろんいちばん近いアンドロメダ銀河です。およそ250万光年の距離があるとはいえ、宇宙のスケールから見れば「お隣さん」です。私たちが見ているアンドロメダ銀河はおよそ250万年前の姿ですが、よほどのことがないかぎり、現在もそこにあるでしょう。

この2つの銀河がお互いに重力で引っ張り合うと、どうなるか。それぞれの質量などもわかっているので、いまはその様子をコンピュータでシミュレーションすることができます。心配なのは星同士が衝突することですが、銀河内は星が密集しているとはいえ何光年もの隙間があるので、よほど運が悪くないかぎり、銀河系の星とアンドロメダ銀河の星がぶつかることはないでしょう。計算上は、太陽系も無事です。

ともかく、2つの銀河が合体することで、星の密度が高まるのは間違いありません。それによって銀河の形状も変わり、バルジやバーやディスクなどのない楕円銀河になると予想されています。先ほど紹介した楕円銀河も、おそらく複数の銀河が合体したものなのでしょう。

銀河が合体すれば、当然、地球から見える夜空も一変します。それも、コンピュータ・シミュレーションができるようになりました。いまは遠くにある星雲のようにしか見えないアンドロメダ銀河が、近づくにつれて徐々に大きくなる。そして、いよいよ衝突が始まったときに夜空がどうなるかをシミュレーションしたのが、[1-27]の予想図です。動画はYouTube で見ることができます(Milky Way’s Head on Collision)。

[1-27]天の川銀河とアンドロメダ銀河の衝突シミュレーション図(右側が天の川銀河)
Credits:NASA; ESA; Z. Levay and R. van der Marel, STScI;T. Hallas; and A.
Mellinger

「満天の星」がさらに倍増するのですから、想像を絶する美しさでしょう。最終的には楕円銀河になるので、どちらを見ても「天の川」がなく、大きな星の塊が見えるはずです。

これを見るために、できることなら、あと40億年ほど長生きしたいものです。もっとも、そのころには太陽の膨張に備えて脱出計画を本格化させなければいけないかもしれませんが……。

ちなみに、重力で引っ張り合って合体する銀河は、2つとはかぎりません。「ステファンの五つ子」と呼ばれる銀河の集団を見てください[1-28]。真ん中の銀河はすでに2つが合体しているので、もともとは5つの銀河に分かれていました。それが、いつかは合体してひとつの楕円銀河になる。そこでどんな夜空が見られるようになるのか、考えるだけでドキドキしてきます。

[1-28]ステファンの五つ子
Credit:NASA, ESA, and the Hubble SM4 ERO Team

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2022年1月9日13時半から村山斉さんの刊行記念講演会を開催します(会場参加&オンライン)。詳細・お申し込みは幻冬舎大学のページからどうぞ。

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夜空を彩る満天の星や、皆既日食・彗星などの天体ショー。古来より人類は宇宙の美しさに魅せられてきた。しかし宇宙の美しさは、目に見えるところだけにあるのではない。これまで宇宙にまつわる現象は、物理学者が「美しい」と感じる理論によって解明されてきた。その美しさの秘密は「高い対称性」「簡潔さ」「自然な安定感」の3つ。はたして人類永遠の謎である宇宙の成り立ちを説明する「究極の法則」も、美しい理論から導くことができるのか? 宇宙はどこまで美しいのか? 最新の研究成果をやさしくひもとく知的冒険の書。

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宇宙はなぜ美しいのか

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村山斉

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)教授、カリフォルニア大学バークレー校マックアダムス冠教授。1964年東京都生まれ。91年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。東北大学助手等を経て2000年よりカリフォルニア大学バークレー校教授。02年、西宮湯川記念賞受賞。07年から18年10月までカブリIPMUの初代機構長。専門は素粒子論・宇宙論。世界の科学者と協調して研究を進めるとともに、市民講座などでも積極的に活動。『宇宙は何でできているのか』(幻冬舎新書)、『宇宙は本当にひとつなのか』(ブルーバックス)、『宇宙を創る実験』(編著、集英社新書)、翻訳絵本『そうたいせいりろん for babies』(サンマーク出版)など著書多数。

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