年始の初詣だけでなく、お宮参りや七五三、合格祈願、神前結婚など、私たちの暮らしと切っても切り離せない神社。御利益の話はもちろんですが、そこに祀られている多種多様な神々について、みなさまはどれだけご存知でしょうか。その数において上位の「祭神」11系統の、歴史や由緒、特徴、信仰の広がりを解説した『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』(島田裕巳著、幻冬舎新書)から、身近な神々をより深く知る驚きの話をお届けします。
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19万3000あった神社が明治時代11万に「整理」された
日本全国には、いったいどれだけの数の神社があるのだろうか。
宗教についての統計ということでは、文化庁の宗務課が毎年刊行している『宗教年鑑』というものがある。これは、それぞれの宗教法人から申告された数をそのまま掲載したものだが、その平成22(2010)年版によれば、全国の神社の数は8万6440社となっている。
これは、仏教寺院の数を少し上回っている。仏教寺院は全国に8万2346カ寺ある。ただ、そのなかには、神仏習合の時代の名残で11の神社も含まれている。これを神道と仏教のどちらに分類するのかが問題になってくるが、神社と寺院の数はともにおよそ8万台と考えていいだろう。
神社の場合には、宗教法人としての認証を受けていない、一般に「小祠」と呼ばれるものがある。街角にひっそりと祀られているものもあれば、家のなかに祀られた屋敷神もある。あるいは、企業が本社の屋上などに祀っているものもある。そうしたものをあわせると、8万社ではすまない。14万社から15万社はあるのではないかと言う神職もいる。
戦前においては、主要な神社は国によって経済的に支えられていた。そのため、経費削減という意味もあり、明治時代には「神社整理」が行われた。国の政策として、複数の神社を一つに合祀したのである。この政策に対して、序章で述べたように民俗学者の南方熊楠などが反対したことはよく知られているが、これによって19万3000社あった神社が11万社余りに減ったとされている。
最近でも、過疎化などによって、それぞれの神社の氏子の数が減少し、維持できなくなった神社がつぎつぎと生まれている。その場合にも、近隣にある神社に合祀されることになるが、一年の間に数百、あるいは千の単位で減少しているとも言われている。これから、人口の減少がさらに進めば、それと併行して神社の数もかなり減少していくことが予想される。