「ショートケーキ」や「チーズケーキ」などの定番商品から、「パリブレスト」「ババ」などの変り種まで、約150種のお菓子に秘められた物語を明らかにした書籍『お菓子の由来物語』。名前や形の由来から、現代にいたるまでの変遷や歴史上の人物との関係性など、お菓子のルーツを余すところなく紹介しているこの一冊から、一部を抜粋してご紹介します。
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スコーンのルーツ
粗挽きの大麦粉を使って焼いたバノック(bannock)というお菓子がその起源とされ、文献に初めて登場するのは1513年といわれる。19世紀半ばに、ベーキングパウダーやオーブンの普及によって、現在の形になった。
名前の由来は、(1) スコットランドの古いことばゲイル語のSgonn(ひと口大)から来ているという説と、(2) イギリス・スコットランドのバースにある「スコーン城」の歴代国王の戴冠式に使用された椅子の土台の石がThe Stone of SconeまたはThe Stone of Destiny(運命の石)と呼ばれ、それに由来するという説がある。後者の説が有力。そのため、スコーンは、石の形に焼き上げられることが多い。
その神聖な石としての由来からナイフは使わず、縦に割らずに手で横半分に割って食べるのがマナーとされる(*1)。
アフタヌーンティーの由来
アフタヌーンティーは、1840年代イギリスのベッドフォード公爵夫人であったアンナにより始められた習慣である。当時の上流階級の食生活は、たっぷりの朝食、軽い昼食、オペラ鑑賞など夜の社交が終わってからの遅い夕食というパターンで、昼食と夕食の間の時間がかなり空いていた。そこで、ある日、小腹を満たすため、メイドにお茶とパンやケーキを用意させたのがはじまりだという。これが習慣となり、友人も招待する「午後のお茶会」=アフタヌーンティーとなっていった(*2)。
*1 スコーンが焼き上がるとき、側面に亀裂が入るのが成功の証とされるが、これは、俗に「狼の口」といわれる。
*2 日本では、「おやつ」の時間というが、このことばができた江戸時代は、1日2食で、さすがに、それではお腹が空くので、「八つの刻」(14~16時)に軽食をとるようになった。これが「お八つ」である。
「運命の石」とは
伝説によれば、古代エジプトのツタンカーメン王の玉座の下にあった石だという。
もともとの名は「ヤコブの枕石」。出エジプトをするモーゼの先祖であるヤコブがこの石を枕に寝ていたところ、神様が現れた。目覚めたヤコブはその石を立てて、信仰の記念としたという。
その後、ユダヤ教の難民によってアイルランドに持ち込まれた後、スコットランドに運ばれ、王の戴冠式に使われるようになった。
話はまだ終らない。
1296年、スコットランドに勝利したイングランドは、スコットランドを強制併合。この時、石はイングランドに運ばれ、以後、イングランド国王の戴冠の玉座として用いられるようになった。
しかし、1996年、スコットランドに返還され、現在はエディンバラ城にある。大きさは66×41×28センチ(みかん箱よりひとまわり大きいくらい)、重さ約152キログラムである。
お菓子の由来物語
「ショートケーキ」や「チーズケーキ」などの定番商品から、「パリブレスト」「ババ」などの変り種まで、約150種のお菓子に秘められた物語を明らかにした書籍『お菓子の由来物語』。名前や形の由来から、現代にいたるまでの変遷や歴史上の人物との関係性など、お菓子のルーツを余すところなく紹介しているこの一冊から、一部を抜粋してご紹介します。