すっかり定着したテレワーク。それとともに増えているのが、オンライン独特のコミュニケーションに関するお悩みです。対面で会うのと違って、うまく相手に伝わらない、相手の話に集中できない……。そんなあなたに読んでほしいのが、パフォーマンス心理学の第一人者、佐藤綾子さんの『オンラインでズバリ伝える力』。アフターコロナの時代になっても、オンラインの活用は続くと見られる今、ぜひ身につけておきたい本書のメソッドをいくつかご紹介します。
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「表情」は言葉よりも強烈
相手を好きか嫌いか、これが人間関係のスタートの決め手になります。
人間は好き嫌い、好意を何によって決めるのか。
「いい匂いがしたから」「お金持ちだから」と、その条件はいろいろとあるでしょう。
ここで私が実験した、「日本人の好意の総計(total liking)」のデータのご紹介をします。
これはアメリカの心理学者メラビアンの実験法を、日本人向けに私がアレンジし、日本人を対象に行った大規模な実験です。
まず3つの単純な言葉、「どうぞ」「どうも」「ありがとう」を実践女子大学の学生に、よい声・悪い声、よい顔・悪い顔に分けて言ってもらいました(メラビアンの実験では「well」「please」「thank you」)。
そして彼女たちが話す様子を撮影したビデオを全国の社会人と学生、1000人以上に見せ、好意が言葉・声・顔の表情から、どの割合で伝わるかを集計したものです。
日本人の好意の伝わり方は次のようになります。
・総計100%=言葉8%+声32%+顔の表情60%
メラビアンの例では顔が58%ですから、好き嫌いを決めるときに日本人はアメリカ人よりもさらに顔の表情を重視していることがわかります。パッと見て顔がいいと思ったことで相手に好感を持ち、続いてそのあとの話に耳を傾けるという手順です。
これはオンラインでも同じことです。パッと画面に現れた顔の表情がよいと相手への印象が格段に上がります。
ところが、残念なことに、対面よりもオンラインのほうが顔の表情が伝わりにくい。したがってどうするかと言えば、自分の顔の表情をカメラの中でより鮮明に映すように工夫しましょう。
なるべく顔を大きく映すこと(カメラに近寄ること)、ライトをつけること、メイクアップをしっかりすることなどがその補助手段になります。
ライトの選別については第5章で記述します。
「1秒の印象」がその人のイメージになる
非言語で受けた印象は、どのぐらい正確で、かつどのぐらい続くのでしょうか。
日大芸術学部演劇学科大学院生7人に協力してもらい実験をしてみました。
この7人がスピーチをしている様子を映像に撮り、そのスピーチを2秒、5秒、10秒で時間を区切り、音声をすべて除きました。つまり、口をパクパクしている人が映っているだけの映像です。
その結果、スピーチをしたA君からG君までの7人の印象が決まりました。
次の表を見てください。
2秒で親しみやすいと言われた人は、映像を5秒に延ばしても10秒に延ばしても、結果はほとんど一緒でした。
社会人から見た印象も大学生から見た印象も一緒です。
結局のところ、パッと見た瞬間に感じ取った印象を、私たちはずっと持ち続けるわけです。この実験はたまたま2秒で行いましたが、ウィルソンの説に基づいて私も1秒で実験をしたことがあります。
結果は、1秒の印象を聞いたときにも、2秒の印象を聞いたときにも、一緒でした。
オンラインでズバリ伝える力
すっかり定着したテレワーク。それとともに増えているのが、オンライン独特のコミュニケーションに関するお悩みです。対面で会うのと違って、うまく相手に伝わらない、相手の話に集中できない……。そんなあなたに読んでほしいのが、パフォーマンス心理学の第一人者、佐藤綾子さんの『オンラインでズバリ伝える力』。アフターコロナの時代になっても、オンラインの活用は続くと見られる今、ぜひ身につけておきたい本書のメソッドをいくつかご紹介します。