第171回直木賞を受賞された一穂ミチさん。最新文庫『砂嵐に星屑』が好評発売中です。
2022年2月の単行本発売時にお届けした一問一答を再掲します。本日は後編をお届け。大注目の一穂さんの素顔とは?
* * *
一穂さんの素顔に迫るべく、一問一答にお答えいただきました。今回は後編です。
Q6. 一番最初の記憶はなんですか?
七五三で晴れ着を着せてもらったこと。クリスマスの夜中に目が覚め、枕元にあったプレゼントの包装をがさがさ破いたこと……など。
保育園の先生がお昼ごはんに食べていた「日清焼きそばU.F.O.」をほんのすこし分けてくれて、おいしい! と感動したのも覚えています。
Q7. 大阪の好きな場所は?
御堂筋、淀屋橋近辺の川べり、梅田の歩道橋と地下街、国立民族学博物館、天保山周辺の海辺、天神橋筋商店街、大阪駅から大阪ステーションシティシネマにつながっている長いエスカレーター、などなど。たこ焼きは「わなか」派。
Q8. ボーイズラブの魅力は?
改めて考えたことがないですね……。「男子同士っていい!」という、理屈じゃないパッションにかられて今日まで生きてきました。「萌え」に根ざす高揚感って、高濃度の栄養点滴を脳に直接ぶっ刺しているように効くんですよね。
サウナーの皆さんは「ととのう」って言いますが、「ととのった」経験のない人にその感覚を伝えることは難しいと思います。わたしにとってのBLもそういう存在です。
Don’t think, feel.
Q9. 今までで一番怖かったことは?
階段から落っこちて胸椎骨折し、「落ちた瞬間に痛みがなかったらもう首から下は動かなくなっていたところだった」と言われたこと。「痺れが出てきたら今後麻痺に陥る可能性もある」と言われましたが、今のところ元気です。
Q10. 影響を受けた人や作品を教えてください。
影響と言っていいのか、濃く好きなのは小説では川上弘美先生、三浦しをん先生、村上春樹先生。漫画家の谷川史子先生、いくえみ綾先生、志村貴子先生。スピッツとCocco の歌、ナンシー関のコラム、ダウンタウン、八〇年代後半~九〇年代の週刊少年ジャンプ、ファンロード。昔の藤子不二雄アニメ。
(初出:小説幻冬2022年2月号)
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砂嵐に星屑
舞台はテレビ局。旬を過ぎたうえに社内不倫の“前科"で腫れ物扱いの四十代独身女性アナウンサー(「資料室の幽霊」)、娘とは冷戦状態、同期の早期退職に悩む五十代の報道デスク(「泥舟のモラトリアム」)、好きになった人がゲイで望みゼロなのに同居している二十代タイムキーパー(「嵐のランデブー」)、向上心ゼロ、非正規の現状にぬるく絶望している三十代AD(「眠れぬ夜のあなた」)……。それぞれの世代に、それぞれの悩みや壁がある。
つらかったら頑張らなくてもいい。でも、つらくったって頑張ってみてもいい。続いていく人生は、自分のものなのだから。世代も性別もバラバラな4人を驚愕の解像度で描く、連作短編集。
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